「ママがいい! パパはダメ」と言う子どもの対処法/vol.1「ママがいい」理由とは?
5月は「こどもの日」がありましたね。古くから5月5日は「端午の節句」として、男の子の成長を祝う行事とされています。皆さんの家でも鯉のぼりやカブトなどを飾ったり、お祝いをしたりされたのでしょうか?
「こどもの日」は母に感謝する日でもあった
「国民の祝日に関する法律」で「こどもの日」は、以下のように定められています。
↓↓
「こどもの日 5月5日 こどもの人格を重んじ、こどもの幸福をはかるとともに、母に感謝する。」
面白いですね。こども日はこどものお祝いと同時に「母に感謝」する日なのです。簡単に言ってしまえば、日本版の「母の日」でもあるのです。それでは父親はいつ感謝されるのでしょうか? 先ほどの法律のどこを見ても、「父に感謝」という文言は出てきません。ちょっと残念ですね。
これは単なる一例ですが、従来の日本における子どもと母親の強固な結びつきを、端的に示しているように思います。つまり「子育て=母親」ということです。これにはいくつか理由が考えられますが、大きな理由の一つとしては、出産を行うのが母親であり、産むことがそのまま育てることと同一視されているから、と推測されます。特に乳児の子育ては授乳がメインとなるので、「育てる=授乳=母親」という方程式が、いともたやすくできあがるのでしょう。
「子育て=母親」の社会イメージが母子の関係性をより強固なものに
私は保育士でもあり、乳児クラスの担任もしてきました。また育児休業を3回取得してきました。その経験から考えると、この公式の半分は正解だと思いますが、半分は正しくないと考えています。もちろん授乳は母親にしかできないものですが、それ以外の子育ては、父親にもできるのです。
しかし、社会のイメージが「子育て=母親」となっている中で、皆さん自身も母親の方が育児に向いていると思っていませんか? そのようなイメージや意識が、子育てにおけるさまざまな場面で母親の優位性を作り上げているのだと思います。
例えば、子どもが泣いているシーンでは、「どうしたの? ママがいいの?」といったフレーズが使われることがよくあります。また保育所などでは、子どもが熱を出すと、無条件で母親の職場に連絡を入れていた時代がありました。最近は事前に確認をして、父親に連絡をすることも増えてきましたが、まだまだ全体的には、特に乳児期においては、母親が中心のように思います。
このような環境の中で、必然的に子どもたちと母親が一緒にいる時間は多くなり、母親と子どもの間の関係性がより強固なものとなっていくのでしょう。何かあった時に、母親という存在が子どもにとって絶対的なものになりがちです。もちろん父親でも同じようになり得ますが、その関係性を作り上げるまでには、やはりある程度の時間とさまざまな共有経験などが必要となります。仕事の比重が多い父親たちは、物理的に不利な状況なのです。
そのような背景の中で「ママがいい、パパはダメ」という言葉の意味を、次回は考えてみましょう。
※次回は5/25(水)アップ予定。
教えてくれたのは
小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。
http://kasei.cc.osaka-kyoiku.ac.jp/teachers/5.html
ナビゲーター
担当カテゴリー
学び・遊び・教育
大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。