【入学準備】集中力がないけど、大丈夫?集中力に差が出る要因と、就学前にしておいたほうが良いこととは
このコラムでは大阪教育大学教育学部教授の小崎先生が、「こんな時どうしたらいいの?」「子育ての“ココ”が知りたい!」という皆さんのお悩みに答えます。
Question: 来年⼩学⽣ですが、集中⼒がなく、座って話を聞けません。⾝⽀度の途中で別のことを始めたり、⾷事も時間がかかります。就学前準備として、何からどうすれば良いでしょうか。
早いもので2024年度も半期が過ぎ、5歳児年長組はいよいよ小学校の入学が迫ってきましたね。これまでの遊び中心の保育から、勉強が中心になる小学校の生活が始まるということで、保護者の皆さんもいろいろな心配事が出てくるタイミングです。今回の相談はそんなリアルな思いのあるものです。
子どもの集中力はどのくらい?
子どもの集中力に差が出る二つの要因
そもそも子どもの集中力は、いったいどれぐらい持つものでしょうか?これは難しい質問なのです。二つの大きな要因があり、それにより全く異なるからです。
要因1.子どもの性格や気質
一つはその子どもの性格や気質です。生まれ持ったものや、その後の育ちの中で獲得してきたものなど、様々な要因がありますが、その子のキャラクターと関係します。
要因2.集中できる対象
そしてもう一つは、集中できることがどのようなものや行為なのかという、対象による差が大きくあるのです。例えば、勉強や食事は集中できなくても、自分の好きなゲームや漫画ならすごく集中しているかもしれません。
わが子の個性を理解して、「集中できるもの」を見つけよう
この二つの視点をまずは意識してみましょう。つまり「わが子」はどのような性格や気質なのかということを理解することです。これは意外に難しいもの。保育者の先生は、一度にたくさんの子どもを見て生活していく中で、それぞれの差異や個性を感じることができます。
しかし親は基本的にわが子しか見ていないので、他の子どもとの比較や集団の中での子どものポジションがよくわかりません。誤解のないように言っておきますが、これは「他の子どもとわが子を比較しなさい」ということではありません。自分の子どもの個性をどのように理解するかということです。そこをまずは考えましょう。
その上で、わが子の得意なことや集中できることやモノ、その対象は何かを考え、見つけてあげましょう。例えば昆虫や乗り物かもしれません。好きなキャラクターや絵を描くこと、体を動かすことかもしれません。その子の得手・不得手や関心の方向性を見極めてほしいと思います。
もしかすると、まだそれがうまくわかっていない、見つかっていないかもしれません。いろいろな体験や経験をしていく中で、その子なりの集中できるものを見つけてあげてほしいです。大人でもそうですが、すべてのものに全方位的に集中することなどはできません。まずは自分の好きなものや関心のあるものから、しっかりと集中できる機会や体験をしてほしいです。
小学校に向けて、何をすればいい?
5歳児の“今”しかできない経験を
小学校に向けて、集中力の視点から何をすれば良いかということですが、これは少し乱暴な言い方をすれば、特に何かをする必要はありません。なぜなら5歳児年長の活動は「小学校の準備」ではないからです。
昨年まで小学校校長を務めていましたが、一年生の生活や勉強はとてもよく作られたものであり、特に入学当初は丁寧にそしてゆっくりとスタートします。その中で子どもたちの興味関心が、無理のない形で少しずつ広がっていきます。
一年生の多くの子どもたちは、小学校の生活や勉強に興味津々で、ワクワクがいっぱいです。いろいろな取り組みにとても集中していますし、お友達と一緒に活動する中で、その関心の輪が広がっていきます。その延長線上に勉強があるのです。
低学年を見ていて感じることは、しっかりと集中できる子どもは、しっかりとした生活や遊びができている子です。だから少し時間がかかってもいいので、自分でやろうとする気持ちや、楽しい・面白いと思えるものとの出会いを大切にしてあげてほしいです。
5歳児には、5歳児にしかできない活動や経験があります。小学校に向けてというよりも、まずはその5歳児にしかできない活動や経験をしっかりとさせてあげてください。そして小学校に入ったら、またそこで気持ちや生活の切り替えができるように、おうちではゆっくりと過ごし、リラックスできるようにサポートしてあげてくださいね。
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学び・遊び・教育
大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘
大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。