子育ての反面教師にもぴったり!? “人間関係”の防災ガイドに注目
人間関係のトラブルやストレスを“災害”に例えたガイドブック『職場の人間関係 防災ガイド』が2024年6月に発売。まるで災害対策をするような心構えで、困った上司や同僚への対処方法がギュッと詰まった一冊です。これが実はわが子を困った大人にしないための子育てのヒントとしても役立つかも!?筆者で人気カウンセラーの藤本梨恵子さんに、働くママ・パパならではの活用法を聞きました。
トラブルを未然に防いでコスパ良く!
大切にしたい所にエネルギーを使えるように
著書『職場の人間関係 防災ガイド』は「トラブルを防災に例えて、起こる前にどのように対処すれば良いのかという方法が書かれているのが特徴の一つ」と藤本さん。トラブルやストレスを災害に例えられているので、「それなら自分の身を守らないと」という気分にもさせてくれます。
「この手の本は割と表紙からして暗いイメージの本が多いですが、イラストレーターさんにポップなテイストのキャラクターを描いていただいたり、トラブルもキャッチーな災害名に置き換えたりして、お部屋に置いてあっても圧迫感のない仕上がりを目指したんです」と藤本さんは笑顔を見せます。
「トラブルは、起こってしまえば収拾するのにも時間とエネルギーを余計に使ってコスパが悪いですよね。それを未然に防ぐことができれば、そこに使うエネルギーを仕事や子育てなどの中で本当に大切だと思うポイントに使うことができるかなと。職場という環境は気の合う仲間ばかりで構成される所ではないので、人間関係に悩んでいる方のお守りや処方箋のような存在になれる本が書ければ良いなと思っていました」。
「最近は心の繊細な方、優しい方が増えていますよね」と藤本さん。「多方面に気遣いをしがちな方、人の気持ちを感じ取れるからこそ自分のストレスになってしまう方にこそ読んでほしい」と言います。
自分の苦手タイプを知って対策を練ろう
本書では攻撃性の高いタイプから順に「ピリピリ災害」「ムカムカ災害」「イライラ災害」と、ストレスやトラブルの原因になる人たちをカテゴライズ。「人間関係 防災マトリクス」の表ではさらに視覚的に見やすく分類されています。
「ストレスなどの被害が大きくて、対策をする緊急度の高い攻撃性の高いタイプから先に掲載しているのですが、ご自身にとって苦手なタイプというのはそれぞれあるはずなんです。実は攻撃性の高い人には強いけど、依存型の人が苦手なんだなとか、こだわりが強かったり、執着型の人が苦手なんだな、というように、まずは自分の苦手タイプを知っていただいて、よりストレスを感じるカテゴリーを優先して対策をしていただくと良いかなと思います」。
ストレスの原因を知ると相手の印象が変わる?
嫌いな人がそもそも気にならなくなる?
本書の特徴は、トラブルを予防する一つの手段として、「嫌な人の印象を自分の中から変える」という方法を紹介している点です。
「(本書では)例えば意地悪ばかりしてくる人がどうしてそうなるのかという点を性格面だけでなく、子ども時代までさかのぼって想像しています。こういう子ども時代があったからこそ、大人になった今こういう問題行動が出てきている可能性がある、という背景部分を紹介しているんですね」。
「そういう部分を想像してみると、嫌な人だなと思っていた人の印象がなんだかかわいそうな人に変わったりしませんか?カテゴリーが変わるとストレスそのものが軽減されるのではないかと思うんです」と藤本さんは言います。
相手への印象や視点を変えることでトラブルを予防するだけでなく、「もしトラブルが起きても、ストレスなど自分への被害が最小限に抑えられるのではないか」という点に期待して本書を執筆したのだそう。
「嫌な人」の子ども時代は子育ての反面教師に!
嫌な人自体の印象を変えるために記載されている子ども時代の特徴を読むと、子育て中のパパ・ママはハッとする部分があるのも本書の特徴です。「子育て世代の方には職場トラブルだけでなく、子育て自体にも本書を役立てていただけると思います」と藤本さんも話します。
「例えば手柄をすごく横取りするような方、自己顕示欲が強くて人を見下すタイプの方っていると思うんですけど、ではその人がどうしてそんな大人になってしまったのかという背景に、子ども時代、勉強やスポーツで一番を取らないと親御さんが褒めてくれなかったとか、認めてくれなかったケースが多いんです。そうすると、大人になっても無意識に、大人数の中では一番を取ろうとしてしまうんですね。それは威張りたいからという前に、愛に飢えた行動の一つなんです」。
「そういったところを逆算的に読んでいただくと、子育てに役立ててもらえるかもしれない」と藤本さん。
「例えば幼稚園などでも競争では一番を取りなさいなんて外的な基準ばかりで褒めたり叱ったりしていると、そういうものにしか価値がないと子どもながらに思ってしまって、大人になってもそういうものばかりを追いかけてしまう。子ども時代というのは実はとても長い間、その人の性格に関わってくる重要な時期なので、お子さんの心に傷を残すような、悪い影響があるような言葉に注意していただけると良いかもしれません」。
親は子の上司?職場との共通点とは
また2章の「ムカムカ災害」で紹介されている「マイクロマネジメントの濃霧」は過干渉な上司を紹介したもの。「これも下手をするとパパママがわが子にやってしまいがちな行動ですよね」と藤本さんは話します。
3章の『イライラ災害』では、リーダーや上司の立場の人が部下対策のシーンで活用できる例を多く掲載。ミスが多い部下や何でも聞いてくる部下への心構えや、長話のデメリットなど、親としてドキッとする内容も多数収録されています。
「『誰かのチェック依存の塩害』のページで、部下を育てることは子育てに似ていますと書いています。自分から見たら足りないところがたくさんあるけれど、子どもたちにしてみたら精一杯ベストを尽くしているかもしれない。こちらの声のかけ方を変えるだけで結果が激変するなんてケースもありますから、ぜひ子育てにも役立ててほしいですね」。
子育て期は“朝ごはん”みたいなもの
「朝昼晩3食のご飯を食べる習慣のある人が朝ごはんを抜いたら、昼ごはんはたくさん食べたくなりますし、昼ごはんも食べられなかったら、夜ご飯はドカ食いしてしまいそうですよね。愛情も一緒で、例えば子ども時代に愛情をもらえなかったら、思春期の恋愛などで彼氏や彼女から愛情不足を埋めてもらおうとしがちですし、そこでもうまくいかなかったと感じたまま大人になると、もう朝も昼もご飯を抜いた腹ペコ状態ですから、ありとあらゆる人から愛情を受けようとしてしまうんです」
「やっぱり朝ごはんは大事ですよね」と笑う藤本さんは、「そういう意味で本書を子ども時代の愛情のかけ方の参考にしてもらうのは良い使い方かもしれない」と話してくれました。
ストレスやトラブルに対処するメンタルトレーニング法も!
笑顔で子どもと向き合うための切り替え方法
本書では日常的なストレス軽減やトラブル回避のためのメンタルトレーニング法も、コラムで掲載されています。例えば仕事でイライラした日に帰宅後に子どもたちと笑顔で向かい合うなら、「ストレスを溜めない心の防災方法として掲載した『折れない心を作るリフレーミング』がおすすめです」と藤本さん。
これは嫌なことが起こっても、その出来事に対する意味づけを自分の中でポジティブなものに変えていく手法です。「これは心理学でも良く使われるもので、欧米人に比べると日本人は苦手な人が多いんです」と藤本さんは言います。
「日本人は諸々農耕民族なので、お米に虫がついたとか、雑草が生えたとか、そういうものを取り除いていかないと食料が減ってしまいますよね。だから細かいことに気が付けるんです。一方で狩猟民族だった欧米人は、狩りの成果が悪くても『明日こそは大きいのを獲るぞ!』って切り替えたほうが生き残っていけたので、ポジティブな所に目をつけるのが、歴史的にも得意なんですよね」。
だからこそ農耕民族にルーツを持つ日本人はリフレーミングのトレーニングが必要だと藤本さんは話します。
「やっぱり子育てでも欠点に目が行きやすい。今日は公園に行こうと思っていたのに雨が降っちゃった!ではなくて、じゃあ読めていなかった絵本を一緒に読めるね、なんて気持ちを切り替えて楽しむようにパパママが練習すると、きっと子どもたちもそういう考え方ができるようになると思うんですよね」。
また、モヤモヤしてどうしても考え込んでしまうようなストレスやトラブルなら、同じページに掲載されている「ジャーナリング」もおすすめなのだそう。
「嫌だと感じたことをノートにでも、チラシの裏にでも書き出していく方法なんですけど、もうナニサマ!?なんて表現でも、誰に見せるわけではないので、自由に書いてスッキリしていただくと良いと思います」。
苦手なママ友や先生と上手に付き合うヒントも
「事例は職場寄りになっていますが、きつい言い方をする方とか、悪口を言う方なんていうのは日常生活でも良く出会いますよね。そういう方には、該当する災害のページをそのまま参考にしていただけると思います」と藤本さん。
またコラムで紹介されている「嫌な相手をかわす極意」や「相手に好かれる防災方法」なども苦手なママ友・パパ友や、タイプの合わない担任の先生への対処法など、日常生活で大いに役立ちそう。
毎日の職場トラブルや人間関係のストレスに加えて、わが子を困った大人にしないための対処法まで参考になる『職場の人間関係 防災ガイド』。カバーもポップなデザインなので、すぐに手に取れるリビングに常備しておくのも良いかもしれませんね。
取材・文/山田朋子
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