マイペースすぎるわが子に振り回されながら気づいた大切なこと
まわりを気にせず、自分のやりたいことや好きなことを優先する、いわゆる「マイペース」な子ども。わが子のマイペースさに、困っていたり手を焼いているパパやママは多いと思います。
うちの息子も小さな頃、かなりマイペースな子どもでした。でもそんな息子には、すばらしい強みがあると感じています。今回は息子の子育てや保育士としての経験から、マイペースな子がもつ強みと親のかかわり方についてお伝えします。
マイペースすぎる子どもに困っていませんか?
息子が3歳の頃、家族で動物園へ行ったときのこと。初めて見る動物に目をキラキラさせる息子の姿を想像しながら、楽しみに向かったのですが…。実際は、動物園の入り口でアリの行列に遭遇して、そこから動かず30分。なんとか園内に入っても動物をちらっと見ると、柵の前の草むらに歩いていたアリに夢中。結局その日は動物をゆっくり見ることはできず、動物園の端の草むらで、「そっちは進入禁止だから行かないで!」と止めながら、アリをはじめとした小さな虫ばかりを見て過ごしたのでした。
このように、息子はお出かけの時や日常の中で親の想像を上回るマイペースさを発揮し、度々まわりの大人を困らせていました。
遊び込むことのできる子の強み3つ
そんな息子ですが、遊ぶ姿をじっくり観察してきて感じたことがあります。それは、「マイペース=ひとつの遊びを追求できる」ということです。そしてまわりに惑わされずマイペースに遊び込む子には、次のような「強み」があると考えています。
創造力が豊か
アリの例で考えると、大人から見るとただ歩いているだけに見えるのですが、息子にとっては違っていました。
「葉っぱを差し出すとどうなる?」「列になるのはどうして?」「列の先には何がある?」「どうしたら手に登ってくる?」など、さまざまな疑問を思い浮かべ、それを試しながら遊びを展開させていました。
誰も教えていないのに、新しい遊びを自ら創造していく力をもっているのだと思いました。
集中力が高い
そして、刺激的な初めて見る動物が目の前にいても、今浮かんだ自分の疑問の解決に没頭するのは、よく考えてみたらすごいことだと思ったのです。小さな子は、目に入るいろいろなものに興味が移り変わりるものです。よほど集中力が高くなければ、ひとつの遊びを続けることはできないと思います。
根気強い
そしてマイペースにじっくり遊び込む子は、最後までやり遂げる達成感を味わっています。その喜びを知っているからこそ、ひとつの遊びを始めたら目標達成するまでがんばる根気強さも身についてくるのではないかと思います。
この日もアリを手にのせたくて試行錯誤していた息子。最初は指先でつまもうとしてつぶしてしまったり、逃げられてしまったり。そこで、葉っぱを差し出して待ってみたり、指を差し出してみるなど、いろいろと実験をしていました。最後には両手の人差し指と親指で「丸」を作ってアリを閉じ込めると、手に登って来るという大発見をしていました。
自分のペースで過ごさせるとワガママになる?
マイペースで自分を貫く息子に、予定の変更を余儀なくされたり、思った以上に時間をとられたりしてきましたが、私にとって息子のマイペースな部分は最大の長所とも思えました。だからできる限り本人のしたいことに没頭させてあげたいと思い、つきあってきました。
ただ、好きなことばかりさせると、ワガママな子になるのではないかと心配になるかもしれません。でも私は、そうではないと思います。好きなことをじっくりする時間を確保していくことで満足し、親に自分のよさを認めてもらえる安心感があるからこそ、園や学校では集団生活をがんばれるのではないかと思うからです。
集団生活で困らないか心配になるけれど…
子どもは、集団生活の場では家にいる時よりずっとまわりを意識して動いていますし、心配するほど困る場面はないと感じています。私が保育園の先生として子どもたちと関わっていた時、クラスにとてもマイペースな子がいました。その子のする遊びはおもしろく、おっとりしていて癒し系ということもあり、たくさんの友達から好かれていました。遊びに集中しすぎて身支度や製作の準備などが遅くなってしまうこともありましたが、そんな時にはまわりの友達が喜んで手助けをしてくれていました。
自分のことは自分でするのはもちろん大切ですが、それだけを教えていると辛いことがあった時に誰かに助けを求めることができなくなってしまいます。マイペースなその子のおかげで、困った時にはお互いに助け合えるクラスの雰囲気ができていったように感じています。
小学生になった息子を見て思うこと
現在、小学生になった息子は、学校の先生にマイペースと言われることはなくなりました。そして好きなことへの創造力、集中力、根気強さは大人も感心するほどになりました。
息子の小学校では自主学習用のノートが配られていますが、大好きな昆虫の情報をどんどん書き溜め、関連した習っていない漢字や英語での昆虫の学名も書くようになりました。好きなことへの興味を伸ばしていくことが学習面にもよい影響があるのを感じています。また、集団でするスポーツの部活を嫌がらずに続け、キャプテンを務めることになるなんて、小さな頃の息子の姿からは想像ができません。
その子らしさを大切に認めてあげよう
家でのマイペースな子どもの姿を見ていると「早くしなさい」「いつまでやってるの」「みんなもう終わってるよ」などと言いたくなるかもしれません。でもそのような言葉をかけてばかりいると子どもは自信をなくしてしまいます。「今はマイペースでも大丈夫」「この子にはよいところがある」と思って穏やかに見守ることが大切です。
その子ならではのよいところを認めて自信をつけてあげることで、夢や目標を持てるようになり、それを達成するために「今はまわりに合わせる時」と切り替えもできるようになっていくと思います。
そして本人のやりたいことにじっくりと付き合うことで、その子の生まれもったすばらしい強みをもっと伸ばしていくことができるはずです。ぜひ、その子らしさを大切に、よいところを認めてあげてくださいね。