自分で考えて行動することができない小3の娘。何でも聞いてきて不安。どうしたらいい?
Q 何でも「どうやるの? どうしたらいい?」と聞いてくる娘。自分で考えて行動してほしい…
小3の女の子です。自分で考えて行動することができず、何でも「どうやるの? どうしたらいい?」と聞いてきます。お茶を飲みたいなら自分でコップに入れることもできるのに、「ノドがかわいた」だけを言ってきます。 自分で考えて行動してくれないので、この先が不安です(ゆりけ)
A 一番、不安を感じているのは本人です。それを理解してあげましょう
「自分で考えて行動してほしい」これは、どの親も共通な願いだと思います。でも、たいていの子どもがそうなりませんよね。まして「どうやるの? どうしたらいい?」と毎回、聞いてこられたら、ストレスも溜まってしまいます。親が不安になるのも理解できます。
しかし、考えてもらいたいのは、「一番、不安なのは子ども自身である」ということです。自分のやることが正しいかどうか、親・大人・友だちなどを含めたまわりの人にどう思われるかが不安で仕方ないのです。つまり、他者からの評価がとても気になっているのです。
お子さんは「どうしたらほめられるのか?」の評価基準で動いている可能性があります。つまり「何も考えていない」とか、「自分から動こうとしない」ととらえるのは間違いなのです。そうなると、「失敗してもいいからね…」と言っても、そう簡単には変わらなくなりますし、自分から変わるのも難しいと思います。
「どうやるの?」と聞いてくるとのことですが、失敗を恐れるあまり、そう聞かないと不安になるからなのだと受け止めてください。そのあと「どうやったらいいと思う?」とか、「どこまではわかって、どこからがわからないの?」と、わからなさを共有してあげてほしいのです。つまり、その不安感を共有してあげるためにも、「自分がどこまでわかっていて、どこからわからないのか」の境界線を一緒に考えてあげることです。
そして、わからない部分を一緒にやってみましょう。そのあと「わかる部分は自分でやってごらん」と促すといいと思います。そして、子どもなりにできたら、「なかなかよくできているね!」など、取り組んだこと自体を認めてあげてください。
そうした段階を踏んでいくことで、少しずつ自分のできる部分や、判断できる部分が増えていき、最終的には全部、自分でできるようになっていくのです。
「最後まで自分でやりなさい!」と言ったとしても、間違いや、他者の評価を恐れている子どもには逆効果にしかなりません。(1)全部一緒にやってあげる。(2)どこがわからなくて、どこまでならできるかを聞き、その上でわからない部分を手伝ってあげる。(3)少しずつできる部分が増えている成長そのものを認めてあげる。(4)全部自分なりにできる。こういった段階を踏んでいくことがポイントです。
「ほめる子育て」の盲点や欠点を考えてみましょう!
「どうしたらいいの?」と、何度も聞いてくる子どもの共通性は?
こうした子どもに共通していることは、小さいときから「しっかりしなさい!」「そんなこともできないの?」「自分でできることは自分でしなさい」といった言葉をかけられていることです。そうした言葉を言っていなかったとしても、「よく頑張っているね」とか、「小さいのにしっかりしているね」といった言葉を、折に触れてかけられている子どもの場合もあります。
よく「子どもをほめよう」と言われますが、「ほめる」ことを多用する弊害も考えたいと思っています。ほめることはもちろん大切ですが、多用すると「ほめられないとやらない」という子どもになる可能性があるからです。
ほめることの効果が高いのは3歳ぐらいまでと言われています。それ以後は、ほめるよりも「認める」ことです。例えば、子どもが皿洗いをしてくれたときに、「ありがとう。どうしてお皿洗いをしてくれたの?」と聞くようにするといいのです。「だって、お母さんが忙しそうだったから…」なんて言ってくれたら、涙があふれてきちゃいますよね。そんなときは「すごく助かった。ありがとう。とてもうれしい」と言ってあげてください。「いい子だね~」と言うよりも、感謝されることの方が、子どもが求めている言葉なのです。
人は「誰かの役に立った」と感じるときが一番うれしいものなのです。「いい子」という言葉が表側のメッセージだとすると、「いい子でなければ、見捨てられてしまうのではないか?」という裏側のメッセージが込められているのです。これをメッセージの二重性、「ダブルバインド」というのです。
保育園で4、5歳の子どもに自由画を描かせたときにわかったことがあります。それは、子どもの中に「自分の思い・考えをしっかり聞いてもらえていない」という思いと、「自分の思い・考えとは違う怒られ方・ほめ方をされている」という思いがあるということでした。
ある園児の例です。自分が怒られている場面の絵を描いていました。怒っているお母さんの口が大きく開いていて、真っ赤に塗られていました。「このとき、どう思ったの?」と聞いてみると、「怒られるのは仕方がなかったけど、長くずっと怒るんだよ。思わずママの口を見たら、真っ赤に見えたの」と言うのです。その子は「怒る時間をもっと短くしてほしい」と思っているのです。
子どもは幼いながらも、自分の行為について「こう怒られるのは仕方ない」とか、「こうほめられたい」と思っているということです。そうした子どもの思いとすれ違っている場合には、子どもの心には響かないのです。どんなに幼い子どもであっても、その子なりの思いや考え方が存在していることを忘れないでほしいと思うのです。
【参考文献】
『人と人との快適距離―パーソナル・スペースとは何か』 (渋谷 昌三 NHKブックス 1990)
【新刊】
新刊「子どものココロが見えるユーモア詩の世界-親・保育者・教師のための子ども理解ガイド-」(ぎょうせい、1980円)発売中。