ゲームに負けて友達に暴言…悔しい気持ちは尊重したいがトラブルも心配、どう声がけする?

Question: ゲームなどに負けると暴⾔を⾔ったり⼈のせいにしたりします。悔しい気持ちは尊重してあげたいですが、友達とトラブルにならないか⼼配です。どう声がけすればよいでしょうか。

子どもを見るときに必要な「二つの視点」

子どもを見る時に二つの視点があると良いと思います。「その行動や行為から直接受ける印象」と、それらの行動の意味を少しひっくり返してしてみて、「別の角度から見る視点」です。

「ゲームに負けると暴言を言ったり人のせいにする」という姿からどのようなことが心配になるでしょうか。負けず嫌いで、素直に負けることを認めることができない、その怒りや反動が他者に向いてしまうかもしれない、こんなところでしょうか。この気持ちはよくわかりますね。

それではそれらを別の視点で見てみましょう。まず前提として、それだけゲームに集中しており、のめり込んでいる対象のものがあるということですね。とても素敵な集中力です。また、大好きなものがあることはとても素晴らしいことだと思います。

さらに、ゲームでの対戦で負けた時の感情の起伏が大きいということでしょう。情感が豊かであり感性が鋭いのでしょうね。これまでいろいろな物事に触れてきた成果でしょう。「悔しい気持ち」がしっかりと育っており、そのことは次に進む時の一つのモチベーションになることでしょう。

大人の懸念点は子どもにとって学びのチャンス

もちろん友達とのトラブルの可能性が、全くないとはいえません。些細なことで言い合いになったり、勝ち負けだけにこだわりすぎてケンカに発展することもあるかもしれません。けれどそれは、今は起きているわけではありませんよね。あくまで周りの大人が心配していることであり、これからどうなるのかはまだわかりません。

そのように考えると、親や周りの大人が心配しているタイミングは、子ども達にとっては学びの機会です。何か起きてから叱ったり、行動を変化させるのは意外に難しいものです。ですから、お子さんのそんな姿に心配を感じた時は、いいところを認めて褒めながら、親が心配している点を素直に伝えてみてはどうでしょうか。

例えば「大好きなゲームに一喜一憂できることはとてもいい!けれどあまりに感情的になりすぎたり、悪い言葉て文句を言うのは決してよくないよ。お友達と一緒にゲームをした時に、ケンカにならないか心配をするよ。」子どもは子どもなりに、その言葉を受け止めたり、自分の行動を考えたりすることになります。

子どもは俯瞰してみる力がまだまだ未熟、大人がうまくフォローしよう

10歳未満の子どもは、まだまだ自分の行動や感情、言っていることやしていることを客観視できず、冷静に見ることが難しい年齢です。このような自分を客観的に俯瞰して見る力を「メタ認知」といいます。この力がまだまだ弱い子ども達に対して、周りの大人がその子の行動や気持ちをうまく説明してあげたり、またその姿のさまざまな価値や方向性を伝え、自分自身に気づかせるきっかけを与えることは大切です。そこからまた子ども達は、自分との折り合いを自分でつけていくことになります。

もちろんそれらをうまく受け止め、すぐに成長し、行動の改善が起きることはありません。日々の少しずつのメッセージや関わりを通じて、少しずつほんのちょっとだけ変化が起きます。それらを日々積み重ねていくことにより、子ども達の行動や価値観が構築されていくものなのです。子どもの気になる行動に気づいたり、心配ができる保護者はとても素晴らしいです。きちんと日々子どもと関わっている証拠ですからね。

子育ての格言でこんなものがあります。「子どもは思ったようには育たないけど、心配したようにも育たない。」親の子どもに対する思いが大切だと思います。
 


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大阪教育大学教育学部 教授 小崎恭弘

大阪教育大学教育学部学校教育教員養成課程家政教育部門(保育学) 教授。大阪教育大学附属天王寺小学校元校長。兵庫県西宮市初の男性保育士として施設・保育所に12年勤務。3人の男の子それぞれに育児休暇を取得。それらの体験をベースに「父親の育児支援」研究を始める。テレビ・ラジオ・新聞・雑誌などで積極的に情報を発信。父親の育児、ワークライフバランス、子育て支援、保育研修など、全国で年間60本程度の講演などを行う。これまで2000回以上の講演実績を持つ。NPOファザーリングジャパン顧問。Yahoo!ニュース 公式コメンテーター。東京大学発達保育実践政策学センター研究員。兵庫県、大阪府、京都府などさまざまな自治体で委員を務める。

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