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「災害の備えに、やり過ぎはない」保育防災コンサルタントに聞く!子育て家庭の備えのポイントは?子どもと一緒に“楽しく”防災対策するコツ
予期せぬ災害に備えて、保育園・幼稚園では防災訓練を定期的に行っています。園でどのような訓練をしているのか、また、子どものいる家庭での防災対策について、保育防災コンサルタント®の藤實智子先生に教えてもらいました。
お話を聞いたのは、保育防災コンサルタント®・藤實智子先生
一般社団法人日本保育防災協会の認定講師。高校卒業後に消防官としての実務経験を経て、保育士資格を取得。その後、認証保育所の園長、認可保育所の園長を務めたのち独立。現在は保育施設の防災アドバイスや保育士・保護者向けの防災講座などを行う。
園での防災訓練・保育士、園の先生が行っている防災活動とは?
防災訓練を行う頻度は、保育園・認定こども園は毎月1回以上、幼稚園は年2回以上行うことが義務付けられています(地域によっては幼稚園も年11回以上となっている場合があります)。なぜ回数が違うのかと言うと、それぞれ異なる所管関係だというのが背景としてはあるのですが、東日本大震災後は防災訓練の見直しを行った幼稚園も多く、防災訓練の頻度は園や自治体によって異なります。
防災訓練では、地震・火災・風水害などの想定で、子どもたちと一緒に園庭や避難場所までの避難をします。その際に、「おさない」「はしらない」「しゃべらない」「もどらない」「ちかづかない」“おはしもち”の約束を守るなどの指導を行います。
園で⾏っている防災訓練の内容は?
私は保育士たちに防災についての講座を開いているのですが、そこでお伝えしているのは、まず乳児の場合は、保育者がいかに的確に動くことができるかが大事ということです。実際の訓練では、子どもたちが防災頭巾を被ったり避難車に乗ったりすることに慣れてもらうようにしています。
幼児の場合は、保育士・園の先生の言うことを聞くなどの約束事を守るという指導を行い、地震がきたときは「ダンゴムシのポーズ」や机の下などで身を守る方法についても指導しています。職員は初期消火の訓練も毎月行っていますね。
お迎えに行くと「今日は防災訓練をしました」と保育士から伝えてもらうことがあると思うので、園でどのような防災訓練を行っているのか、子どもに聞いてみるのもいいですね。子どもは、話すことによって訓練した内容を再確認できますし、親も子どもたちがどのような訓練をしているのか知ることができます。
保育士が⼦どもたちと防災訓練をするときに意識していること
訓練の時は真剣に取り組むことは大事ですが、あまりそれを意識しすぎて子どもたちを怖がらせることがないように、先生たちがいるから「大丈夫」と安心させることも大切です。楽しい体験こそ子どもたちは覚えているので、防災教育では「楽しく学ぶこと」がポイント。「新聞紙スリッパ」をみんなで作ってみるなど、遊びの延長で防災について考える時間を取り入れるようにしています。
新聞スリッパとは
新聞紙を折るだけで簡単に作れるスリッパです。例えば地震の直後、床にガラスなどが散らばったときに役立ちます。靴を取りに行くまでの動線にガラスが落ちていて取りに行くまでが危ない、そういった一時的に足を守るために持っておくといいです。
就寝時に地震が起きたときに備えて、ベッド下にスリッパを置いている人もいるかもしれませんが、揺れで動いてしまいスリッパがすぐに見当たらない可能性もあります。枕元やベッドのすき間、ベッド横の壁に貼っておく、など揺れがあっても、そして停電しても確実に手に届く位置に置いておくといいですね。
家族で考えておきたい!子育て家庭の備え
⼦育て家庭が持つべき防災アイテムは?
最低限のところで言うと、乳児がいる家庭では避難所にはない可能性が高い、ミルクや離乳食。また、哺乳瓶や哺乳瓶の消毒液も必要になりますよね。幼児がいる家庭は、生活に最低限必要なものは持っておくとして、意外と見落としがちなのが遊びのアイテム。折り紙、お絵かきセット、トランプなど遊べるものを非常用リュックに入れておくといいです。避難の際にはお気に入りの絵本やぬいぐるみなどを持っていくと、子どもが安心した気持ちで過ごせます。
また、大人はスマホが使えなくなったときのことを考えて、避難所が記載された防災マップ、メモ帳とペンなども用意しておくといざというときに役立ちます。
非常用アイテムについての注意点
非常食の確認、非常持ち出し袋の確認は、定期的に。衣類や使い捨てカイロなど季節のものを確認することを考えると、少なくとも年に2回は行っていただきたいです。
非常食の確認ポイント
非常食は事前に味見をして、子どもが食べ慣れたものを用意しておくといいでしょう。味付けが濃いものは水分が欲しくなったり、硬い食材は食べにくいものもあります。非常食は保存期間が長いというメリットがありますが、数年持つからといって期限が切れてしまったことを見落としがち。普段から少し多めに買っておき、使ったら使った分だけ新しく買い足していく「ローリングストック」の習慣をつけるといいですね。
非常持ち出し袋の確認ポイント
家族で持ち出し袋を用意するときは、優先順位をつけて用意するといいですね。例えば自分1人で子どもを連れて避難しなければいけないときにはリュックは1つしか背負うことができません。そのため水や食料、モバイルバッテリーなど必ず要るものだけを入れたメインの非常袋を作っておきます。
避難の際に、もう1人大人がいて他にも持ち運べそうなら優先順位2つ目のもの、3つ目のもの…と用意しておくといいでしょう。袋は、両手が空いて歩きやすいリュックがベストです。中身を入れすぎて重くて持てないと困るので、重さを確認し、またその重さを背負って避難所まで歩けるか訓練しておきましょう。
災害時の待ち合わせ場所、連絡⽅法の確認をするときに気をつけたいポイン ト
避難所は人であふれている場合があるので混雑が避けられる場所、目印になるものがある場所などで待ち合わせできるように事前に決めておくといいと思います。災害用伝言ダイヤル、公衆電話の使い方を確認しておいてくださいね。
避難所、というと学校が真っ先に思いつく人が多いと思いますが、もしも土曜・日曜に地震が起きた場合、学校の鍵を持っている人が来るまで入れないという状況も考えられます。公園や広場など近くの広域避難場所を家族の集合場所に選ぶのもいいですね。
災害時には現金とテレホンカードが役に立つ
親も子どもも公衆電話を使えるように一緒に練習してみるのもおすすめです。家族の連絡先が書かれたメモと小銭を持ち歩くといいかもしれません。
停電になると電子決済が使えなくなるので災害時は現金が必要になることもありますし、意外と知られていないのですが、公衆電話は硬貨の受け皿がいっぱいになると使えなくなるため、テレホンカードがあると便利なんですよ。最近は使う機会が減ってきているかと思いますが、防災アイテムの1つとして知ってもらえるとうれしいです。
入学準備と合わせて確認しておきたい防災対策
小学生になると、1人で行動することが増えますよね。子どもたちが自分自身の判断で身を守ることができるように、就学前の時期にしっかりと考える力を身につけることが大事です。
例えば、1人でおうちにいる時に地震が来たらどうするか?など、子どもと一緒にシミュレーションしてみましょう。登下校の道を一緒に歩きながらもし地震が来たらどこが安全か、危ないところはないか、ポイントを一緒に確認しておくのもいいですね。
おでかけや遊びに防災をつなげて
地域の防災訓練に参加したり、近くの防災センターなどの体験施設で学んだりするのもおすすめです。まずは家族で地震の揺れや災害時のイメージをつけることが大事なので、そういった施設へおでかけとして足を運んでみるといいと思います。そこで体験したことを踏まえて、家庭で防災訓練を行うと、何をすればいいのか行動しやすくなります。
例えば強い揺れがあるときは、階段で移動すると実は危ないよね、家の中にいるときに親子で違う場所にいても、すぐに動かずに揺れが収まるまで待った方が安全かもしれないよね、など意識して訓練できるようになるはず。
また、ゲーム感覚で公衆電話を探しながら地図を作る、避難場所を確認しに行く、など、一緒に散歩しながらできることをやってみるのもいいですね。
災害の備えに、やり過ぎということはありません。楽しみながら防災訓練を日常に取り入れてほしいと思います。
企画・編集/&あんふぁん編集部、文/やまさきけいこ