未来の船からはたらく船まで!小学館『幼稚園』の付録で、大人も意外と知らない!?「海の仕事」を知ろう

小学館の雑誌『幼稚園』6・7月号の付録は、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)で体験型の展示が話題を呼んでいる「商船三井」とのコラボレーションが実現。同誌ではあまり例を見ない船の付録が登場しました。
そこで今回は、「はたらくふねの プログラミングパズル」の企画を担当した商船三井の森裕紀さんと松井亜友さん、そして『幼稚園』編集部の今村祐太さんにコラボレーションの経緯や付録のこだわりポイントにつてお話を聞きました。
きっかけは「大阪・関西万博」!『幼稚園』6・7月号の付録は歴代でも珍しい「船」がテーマ
海に見立てた透明パズルの上で5種類の船を走らせる「プログラミングパズル」
今回の付録は、8枚の透明パズルを組み合わせて、ぜんまいのモーターで動く船をゴールに導くプログラミングパズル。船は雑誌『幼稚園』の特集面で紹介されている5種類全てに着せ替えることができます。
最初にそれぞれの船が目指すべきゴールとスタート地点を決め、サイコロを振って出た目の船を、パズルを組み替えてゴールへ導くというもの。遊びながらプログラミング的思考を育むことができるのも魅力です。航路を決める透明のパネルがまるで光る海面のようで、道なき海を進む船の特徴が見た目からうまく再現されています。

「大阪・関西万博がきっかけで、今までやったことがなかった船の付録を提案できた」(今村さん)
―――今回、商船三井とのコラボが実現したきっかけや経緯を教えてください
今村さん 一番のきっかけは「大阪・関西万博」ですね。博覧会協会の方からたくさんの企業が集まった「フューチャーライフ万博・未来の都市」という大きなパビリオンがあると紹介いただいたのがきっかけです。
商船三井さんは、普段なかなかお話をうかがうチャンスがないですし、船をテーマにした付録をやったことがなかったということも大きかったです。船って日常生活ではあまり関わりがないですよね。「どんなことができるだろう?」と考えを巡らせたら、いろいろアイディアが浮かんできたんです。
森さん そうですね。企業コラボの提案をいただくことはあまりないので、小学館さんからお話をいただいてうれしいと同時に、「何をやろう?」と、期待と不安、両方を感じたというのが正直なところです。
風と水の力で水素をつくる未来の船「ウインドハンター」も紙付録に
「実はみなさんの生活に密接に関係している船を楽しく知ってほしい」(森さん)
―――誌面で紹介されている自動車船・クルーズ船・コンテナ船・LNG船、そして未来の船・ウインドハンターも紙付録で全て再現されていますね
森さん 『幼稚園』の付録はいつもリアリティが追求されていますから、400mもある船をどのように再現するかが悩みどころでした。今「大阪・関西万博」で展示してる「ウインドハンター」は未来の船で、まだ実際にはないものですから、どのようにわかりやすく伝えたら良いかと悩みました。
何回目かの打ち合わせで、今村さんから「着せ替えでやりませんか」というアイディアをいただいて、「こういうやり方があるのか」と、パッっと世界が明るくなりましたね。「すごく面白い」と思い、そこから一気にアイディアが固まりました。
―――この5種類の船を選ばれた理由は何ですか?
松井さん 海の仕事や船の仕事はなかなか普段、馴染みがないと思います。でも実は皆さんの生活に密接に関わっているんですね。そういうところを知っていただきたいというのが万博に出るきっかけでもありましたから、今回の『幼稚園』の企画でも、働く船を代表するような種類の船を紹介したいという思いがありました。
森さん 私たちの会社の理念は物を運んで皆さんの生活を支えることです。ウインドハンターが活躍するのはもう少し先になりそうですが、せっかくなので、今実際に働いているエネルギーや自動車、コンテナなどを運ぶ、みなさんがイメージしやすい船を一緒に載せていただきたいと話しました。

―――未来の船ではありますが、ウインドハンターもこれから私たちの生活に大きく関わりそうですよね
森さん はい。われわれはお客さんから荷物を預かって届けていますが、その荷物となる水素エネルギーを自分でつくってしまおうと発想したのが「ウインドハンター」です。この船自身の動力はほとんど風のエネルギーで走る帆船で、生活に必要なエネルギーとして供給する水素を作り出し、自ら運ぶ船なんです。
今村さん おそらく子どもたちは何となく「船」という存在は知っていても、なぜ船が存在するのかみたいなことを考える機会はなかなかないと思います。だからこそ、自分たちの生活に関わっているという部分を、少しでも知ってもらえれば良いなと思いました。
普段は付録を前提に特集面の構成を考えることが多いのですが、今回は特集でどんな船を紹介するかというところから進めました。商船三井さんが持っている船の種類はとても多いので、バリエーションを豊富に出したいという思いもありました。
紙付録で船が何隻何艘入れられるかという問題もありましたが、入れられるだけ入れた結果、過去に類を見ないボリューム感になりました(笑)。
道なき海を進む船の特徴をうまく再現したプログラミングパズル
「船の特徴を伝えると同時に水に浮かんでいる感も表現したかった」(今村さん)
―――どのような経緯で「プログラミングパズル」の形になったのでしょう?
今村さん 船の付録をやるとなった当初は、水に浮かべたいという気持ちがあったのですが、防水性などを考えるとコストの面からも難しい。それなら水に見立てた何かにしようということで、パズルがいいのではという話になりました。
ウインドハンターには水素をつくって自分で港に戻ってくるという特徴もあったので、その部分を表現する方法を考えた時に、プログラミングパズルでウインドハンターをゴールまで到着させる遊びにすれば良いのではないかと。
森さん 船は自動車などと違って決められた道路をたどるわけではなく、どこに届けるという目的地だけが決まっていて、どのように進むかを自分で決めるのが特徴なんですね。私はこのプログラミングパズルが、船の特徴をよく表現できていると思っています。

「こだわりは、フジツボなどが付かない特殊な塗料を塗っている船底の色を再現したところ」(森さん)
―――紙付録で船を再現するにあたり、どのような部分にこだわりましたか?
今村さん そうですね、コンテナ船はコンテナを積むトラックもついています。ここに船からコンテナを外して積み込めるようにしたんですが、森さんに見ていただいた時に「おっ!」と感じていただけたのが印象的でした。
松井さん コンテナは商船三井が実際に使用している2色のカラーを再現しています。緑とグレーなんですが、実際と同じカラーコードを使用していただいて、リアルさにこだわりました。コンテナの色は会社によって決まっているんですよ。
森さん 私のこだわりは「船底」の色ですね。下の部分をちょっと赤茶色っぽい色にしていただいたんです。見栄えだけを考えたら違う色の方が良いのかもしれないんですが、船底はフジツボなどがつかないように特殊な塗料を塗っているので、実際の色を再現していただきました。
おもちゃとはいえ、なるべくそういうところをきちんと再現したいと、本物らしさにこだわってつくらせていただきました。
今村さん 最初は海に近い色にしようかなと思って相談してみたら、その特殊な塗料が赤茶色だという話を聞いて、こんなところに新しい発見があったのかと驚きました。聞いてよかったと思いましたね。

松井さん あとはウインドハンターの船底の長さですかね。ブリッジの角度や、船首と船尾の長さといった船体のバランスで、どっちが長くてどっちが短いみたいな部分は最後まで型を修正していただきました。帆も実物と同様に12本あるように見える形にしていただきました。
今村さん もともと万博がきっかけの企画だったので、ウインドハンターに関しては、こだわりたい部分全部に対応できるように、何度もやり直しましたね。
「実は目にする機会が多い船に気付いてもらえたらうれしいです」(松井さん)
―――今回の付録で子どもたちにどのようなことを伝えたいですか?
今村さん 僕は就職活動の時に初めて商船三井さんを知ったので、もっと子どもの頃からこういう仕事があると知っていたら、生き方が少し変わっていたのかな、なんて思っているんです。今回、雑誌の特集面でも船に関わる人たちをイラスト付きで紹介しているんですが、何か1つでも興味を持ってもらえたらうれしいですし、船を見る視点が変わったり、将来の夢などにも影響があったりすると良いですね。
いろいろなきっかけになりそうなことを散りばめているので、親子で遊びながら一緒に学んでもらえるとうれしいです。
森さん 万博に関連して、全国の学校に出張授業をしているのですが、そこでも皆さんから「もっと早く知っていれば」とか「こういうのがあるんですね」という声をたくさんいただいているんです。
万博でも、「海の仕事・船の仕事を知ってからこの世界を見ると少し見え方が違う」という動画を流しているのですが、そういうことを堅苦しくなく、遊びを通じて楽しみながら知ってもらえるきっかけになったら良いなと思います。
松井さん みなさん高速道路など、海を眺められる場所に行く機会があると思うんですが、実は船は目の前にたくさんいます。ここに登場するウインドハンター以外の船は、陸からも見える状態で停泊していますし、実際に見るとすごく大きく感じられるんです。ですから、これをきっかけにより身近に船を感じてもらえたらうれしいなと思っています。
PROFILE

森裕紀さん(写真左)
コーポレートコミュニケーション部大阪・関西万博推進プロジェクト プロジェクトマネージャー。
松井亜友さん(写真中央)
コーポレートコミュニケーション部コミュニケーション企画チーム チームマネージャー。
今村祐太さん(写真右)
小学館 幼児誌編集室幼稚園編集。『幼稚園』の付録を担当。
企画・編集/&あんふぁん編集部、取材・文/山田朋子
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