娘2人と山登りに挑戦!都心からアクセス良好な金時山へ

旅行作家の吉田友和さんによるコラム。小学生のお子さんがいる吉田家。ママは出張が多いので、パパと子どもだけで過ごす日も。「ならば、旅をすればいい!」そんな吉田さんが語る「パパだけ子連れ旅」、今回はパパと娘で登山に挑戦です。
小学生の娘2人を連れて、山登りへ出かけたのはゴールデンウィークの少し前のことだった。あたたかくなってくると自然が恋しくなる。パパだけで子連れ山登りを敢行するのは初めてのことだ。いつも通り、ママは出張で不在である。
ママ不在の難点としては、お弁当がないこと。家族で山登りするときはいつも、ママが早起きして豪華な弁当を作ってくれるのだが――まあ、仕方ない。
弁当はなんとかするとして、問題なのは娘たちのやる気をどうやって引き出すかだった。とくに次女は、山登りがあまり好きではない。というより、警戒している節さえある。
「今週末は何をするの?」と聞かれて「山登り」と答えたら、案の定、渋い顔をされた。「楽しいよ~山」と説得してみたが、反応はいまいちだ。
仕方ないので、彼女が欲しがっていたゲームを買ってあげる約束をしたら、「じゃあ、行く」と手のひらを返したのだった。物で釣るような形になってしまったが、実はパパもやりたかったゲームだったことはここだけの話だ。
子連れで登るならどんな山がいいか
まだ娘たちが小さかったころ、天山という佐賀県にある標高1,000メートルぐらいの山に家族全員で登ったことがある。
そのとき長女3歳、次女1歳。とくに次女はまだよちよちで、ママが抱っこ紐で抱っこした状態で歩を進めていたら、それを見た長女が「ずるい!」と文句を言い出して、結局彼女も僕が終始抱っこする形で登頂したのだった。
3歳とはいえ長女の体重はゆうに10キロは超えていた。それをずっと抱っこした状態で山を登るのは本当にきつく、まるで修行のようだった。
とはいえ、いまとなってはそれも昔話だ。娘たちももう小学生だから、抱っこする必要なんてない。むしろ大人以上に体力があるぐらいだ。
逆に、パパの体力のほうが心配かもしれない。運動不足の日々が続き、昔と比べてだいぶ衰えてきている。仮に子どもたちが登りたいと言っても、あまりにも険しい山はパパ自身が避けたいのも本音だったりする。
そもそも、子連れで登るならどんな山がいいのか。筆者の場合、山選びでとくに大きな判断材料としているのは次の3点だ。
・所要時間
・登山口までのアクセス
・景色
以上を考慮して選定した結果、今回は神奈川県南足柄市から「金時山」に登ることに決めたのだった。
所要時間
登る山を選ぶ際に、僕がまず気になるのは登山にかかる時間だ。登山コースを調べてみると、大抵はそのコースの所要時間が記載されている。あくまでも目安ではあるものの、これが参考になる。
同じ山でも複数の登山コースがあって、それぞれ難易度が異なっていたりする。やはり、コースがハードになるほど所要時間は長くなる傾向にある。
あまりに長いのは嫌だが、短すぎるのも張り合いがない。仮に初級、中級、上級に分かれるのだとしたら、自分たちに合ってそうなのは中級、ただし初級寄りの中級といった感じ。
今回選んだ金時山は、所要時間が往復2時間程度らしい。それぐらいなら頑張れるかな、と思えるレベルの長さだ。
金時山にはいくつか登山コースがあるのだが、それらの中でも最も所要時間が短いのがこのコースのようだった。実はここ、最近になってできた新しいコースだという。
南足柄と箱根を結ぶ新たなルートとして、2021年に開通した「はこね金太郎ライン」という道路がある。その途中に作られた「金時見晴パーキング」という駐車場が、登山コースのスタート地点なのだ。
つまり、新しい道路ができたことで、これまでよりも頂上に近い位置から登山を始められることになったわけだ。大幅なショートカットと言っていい。
登山口までのアクセス
山登りをするにあたっては、登山口までどうやって行くか(行けるか)はひとつの課題だ。行くまでが大変すぎて、登山口へ着いたらもうへとへと……なんて事態は回避したい。
自宅から登山口までの移動時間は、できれば1時間ぐらいだとありがたい。長くても2時間以内。電車で行くにしろ、車で行くにしろ、それぐらいが理想だ。
今回はパパだけ子連れ旅では久々となる、自宅から車での出発となった。我が家からは東名高速の入口が近く、東京から西方向への移動は比較的しやすい。
途中コンビニで食料を調達したりしつつも、1時間半ぐらいで目的地の金時見晴パーキングに到着。できてまだ数年という駐車場は綺麗だ。しかも駐車料金は無料なのがうれしい。
懸念点として、停めらる台数がそれほど多くはないのだが、行ってみたら運よく1台分だけスペースが空いていたので素早く停めた。
景色
登るのがそんなに大変ではなく、自宅から行きやすい山という前提条件をクリアできたとしても、肝心の山自体に魅力があるかどうかもまた判断基準となる。当たり前の話だが、山ならなんでもいい、というわけでない。
個人的にとくにこだわりたいのは、山から見える景色だ。道中の景色も美しければなおいいが、最も重視したいのはゴール地点、すなわち頂上の景色だ。
パノラマの風景をこの目にして感動したい。遥か遠くの下界を見下ろしながら美味しいお弁当を味わいたい。
いわば、登山のご褒美だ。頂上で待っている景色が素晴らしければ、それだけ登り終えて得られる達成感が大きなものになる。
そこまで本格的ではないものの、多少は覚悟を持って挑む山。そこそこ大変な思いもするが、許容できるレベルの難易度。自分でもわがままなことを言っている自覚はあるが、いいとこどりしたいのだ。要するに、手軽に絶景を楽しみたい。
金時山に登ってみた!思っていたよりハード?
そんなわけで、ここからは登山レポートである。
歩き始めてすぐは平和だった。駐車場を出発してしばらくは平らな道で、登山というよりハイキングとでもいった感じだったからだ。娘たちはお互いふざけたことを言い合って、げらげら笑っていた。そのうち、歌まで歌い始めたほどだ。
ところが、そんなイージーモードは長くは続かなかった。歩を進めるにつれ明らかに勾配がきつくなってきて、あっという間に険しい坂道に変わった。ぜえぜえ息が切れる。娘たちからも笑顔が消えた。
「あとどれぐらい?」と、さっそく詰問してきたのは次女だ。
「まだ歩き始めたばかりだよ~」
なるべく刺激しないように明るいトーンで返したが、納得できないのか食い下がってくる。
「だ・か・ら! どれぐらいかかるのかって?」
「……さっき看板に45分て書いてあったかな」
「そんなに!」
不機嫌オーラ全開という感じになってしまったので、とりあえず休憩タイムとした。日陰に入って水分補給。
そうこうしているうちに、今度は姉妹で何やら言い合いが始まっていた。ケンカに発展しそうな危うさが漂い始めたので、慌てて先へと促したのだった。
その後も、「あとどれぐらい?」としつこく聞いてくる次女をなだめながら、5分歩いては休憩を繰り返すというスローペースでの山登りとなった。
それにしてもこの山、思っていたよりも坂道がきつい。頂上までの距離こそ短いが、そのぶん一気に高度を稼いでいくようなコースになっている。その点においては、娘がぶうぶう文句を言うのも仕方ない気もした。
とはいえ、道自体はある程度整備されている印象だ。途中で岩をよじ登ったりとかしないし、鎖場のような難所もない。多少の体力は問われるものの、子連れでも比較的安全に山登りが楽しめる山と結論づけてよいだろう。
山中では、誰かとすれ違う際に「こんにちは~」と挨拶をするのが暗黙のマナーだが、子ども連れだと優しく声をかけてくれる人も多い。「あともう少しだよ」「がんばってね」という声に励まされながら足を進め、いよいよ頂上に到着したのだった。
まずは登頂した喜びに満たされながら記念撮影。山頂標識に標高1,212メートルと書いてあるのを見て、よくぞがんばったと自分たちを称えたくなった。
山頂の茶屋で冷たいジュースを買って、見晴らしの良い手ごろな岩に腰かけた。お待ちかねのお弁当タイム。勢いよくおにぎりを頬張っていくうちに、娘たちに笑顔が戻った。


今回のまとめ
下山は打って変わって平穏な山歩きとなった。下りだから体力的に楽チンなことに加えて、お腹がいっぱいになって幸せな気持ちになっているせいもあるだろう。姉妹でずっとぺちゃくちゃおしゃべりしながら歩いていった。さっきまで険悪な雰囲気だったのがうそのようだ。
風景を楽しむ余裕も出てきた。金時山の感想をもうひとつ書くと、樹木が少なく、遮るものがないため眺望がすばらしい。この日はやや雲がかかっていたが、富士山の雄姿も望めた。
ちなみに、金時山は「きんときやま」ではなく、「きんときざん」と読むのだと山頂標識を見て知った。山頂標識は2種類設置されていて、それぞれ「静岡県小山町」「箱根町」と書いてある。箱根町は神奈川県だから、つまりこの山は県境に位置するというわけだ。
首都圏からなら日帰りでも十分に行ける距離だが、箱根なども近いから一泊するのもありだろう。我々も下山後、御殿場で一泊してから帰路についた。泊まったホテルが大変ユニークなところだったのと、翌日立ち寄った公園が最高に子連れ向けだったので、その話もまたいずれできればと思っています。