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イライラと上手に付き合うには?親子で“怒り”と向き合う「アンガーマネジメント」とは

イライラと上手に付き合うには?親子で“怒り”と向き合う「アンガーマネジメント」とは

「なんでそんな言い方をするの」「またイライラして…」。子どもの怒りに振り回されて、つい親のほうが爆発してしまうこともありますよね。ただ、イライラや怒りは“悪い感情”ではないと、アンガーマネジメントの専門家・戸田久実先生は言います。子どもの“イライラ”の背景にある気持ちや、親子でできるトレーニング、親自身の怒りとの向き合い方について、お話をお聞きしました。

『まんがでわかる 子どものイライラが消える本13歳までに身につけるアンガーマネジメント』(かんき出版)

お話を聞いたのは

戸田久実(とだ・くみ)さんの画像

一般社団法人日本アンガーマネジメント協会代表理事

戸田久実(とだ・くみ)さん

アドット・コミュニケーション株式会社代表取締役
立教大学文学部卒業後、株式会社服部セイコー(現 セイコーグループ株式会社)にて営業職、音楽業界の企業にて社長秘書を経験しながらコミュニケーション研修に携わる。2008年、アドット・コミュニケーション株式会社を設立。2015年、一般社団法人日本アンガーマネジメント協会の理事に就任した後、2024年より代表理事を務め、協会運営とアンガーマネジメントの普及に尽力。大手民間企業や官公庁を中心に、研修講師として活躍するほか、書籍も含め、親や子ども向けのアンガーマネジメントコンテンツも提供している。講師歴30年以上、登壇数は4,500回を超え、指導人数は25万人に及ぶ。おもな著書に、『アンガーマネジメント』『アサーティブ・コミュニケーション』『アクティブ・リスニング ビジネスに役立つ傾聴術』(日経文庫)、『小学校教師のための言いかえ図鑑: アンガーマネジメントの手法をいかし、上手に叱る・伝えるテクニック』(誠文堂新光社)、『イラスト&図解 コミュニケーション大百科』 『アンガーマネジメント 怒らない伝え方』『アドラー流 たった1分で伝わる言い方』『すごいフィードバック~心が動き、行動が変わる!』(かんき出版)など多数。中国、韓国、タイ、台湾でも翻訳出版され、累計25万部を超える。

子どものイライラとの向き合い方

本書ではアンガーマネジメントについて、マンガでわかりやすく教えてくれる

―子どもの“イライラ”の裏側には、どんな気持ちが隠れていることが多いですか?

イライラの裏側には、寂しい、不安、困っている、心細い…といった感情が隠れていることが多いです。自分の思い通りになっていないという“もどかしさ”から来ることもあります。

まだ言語化が得意ではない年齢だと、複雑な気持ちを“イライラする”“むしゃくしゃする”という形でしか表現できない場合があります。悲しさや不安が混ざっていることもありますし、背景は子どもによって異なります。

―イライラしている子どもに、親はまずどんなふうに声をかけたり、受け止めたりするとよいのでしょうか?

私は日本アンガーマネジメント協会の代表を務めていますが、協会では5歳からアンガーマネジメントを学べるキッズプログラムがあり、教えることのできる資格、キッズインストラクターの養成講座もあります。その中で強く感じるのが、大人自身が“感情の理解や表現”を学んだ経験が少ないということです。

どうしても大人は余裕がないと「イライラしないでよ」「静かにして」と言ってしまいがちですが、子どもが自分の感情を扱えるようになるには、まず言語化の手助けが必要です。

まだ言葉が出にくい年齢なら、「寂しい?」「悲しい?」「困っているの?」と大人が言葉の候補を示すのも良いですし、落ち着いたときに“絵で表現させる”方法もあります。

体のイラストを使って「どこがどうなった?」と聞くと、
・頭が痛い → 頭を黒く塗る
・手が熱い → 手を赤く塗る
・胸がドキドキ → 胸に印を描く
など、子どもなりの表現で今の状態を教えてくれます。

絵で表現してもらうと、言葉では出にくい気持ちも共有しやすくなります。子どもによって伝えやすい方法はさまざまなので、その子に合ったやり方を見つけていくことが大切ですね。

親子でできるアンガーマネジメント

―アンガーマネジメントは、家庭ではどんなふうに取り入れられますか?

まず親が“怒りという感情をどう扱えばいいのか”を知ることが大切です。怒らないようにするのではなく、“怒りと上手に付き合うためのトレーニング”です。

アンガーマネジメントは練習すれば子どもでも大人でも必ず身につけられます。親が自分の感情の扱い方を理解することで、子どもの良いお手本にもなります。

―子どもと一緒にできる練習法や、日常で使える声かけはありますか?

言語化の練習はとても大切です。「どんな気持ちだった?」「どうしてそう思ったの?」と声をかけたり、うまく言えないときは絵で表現したり、体のどこがどう感じたかを伝える練習も効果的です。

子どもによって“表しやすい方法”は違います。体の感覚で表す子、絵で伝える子など、その子に合った方法を探っていくと、感情が扱いやすくなります。

そして何より大切なのは、親自身が“気持ちを言葉で伝える姿”を見せること。子どもは親の行動をよく見ています。親が自分の怒りを言語化して伝えることで、子どももその方法を自然と学んでいきます。

親が怒りと上手に付き合うためのコツ

―親がつい言ってしまう“NGな怒り方”と、その言い換え例は?

「なんでできないの!」はよくある言い方ですが、子どもは理由を説明できません。怒っているときに本当に伝えたいのは、『こうしてほしい』という要望です。なので、「○○してほしいんだよ」と“リクエスト”として伝えることが大切です。理由も添えてあげると伝わりやすくなります。

―叱りすぎた…と思ったとき、気持ちの切り替え方はありますか?

コミュニケーションに“致命的な失敗”はないと思っています。家族ならなおさら、言い直したり謝ったりできます。「さっきは言いすぎたね」「本当はこう伝えたかったんだよ」と親が素直に伝える姿は、子どもにとって最良のモデルです。

また、自分自身に対して『こうあるべき』を課しすぎている親御さんも多いです。“完璧でなくていい”と、自分へのハードルを少し下げることも大切です。

―親が怒りを上手に使うために、日頃からできることは?

自分がどんなときにイラッとしやすいかを“アンガーログ”(怒りの日記)に書き留めるのはとても有効です。言語化することで客観的に感情を捉えやすくなります。

また、5分・10分・30分…と“ごきげんメニュー”を作っておくのもおすすめです。深呼吸、好きな音楽、コーヒーを淹れるなど、自分を整える行動を事前に用意しておくと、怒りの感情にのまれにくくなります。

現代の子どものイライラ事情

― SNS・ゲーム・人間関係…現代ならではのイライラに変化はありますか?

最近は「子どもが何を考えているか分からない」という親御さんの悩みをよく聞きます。SNSやゲームは親の見えないところでやり取りが進むので不安にもつながりやすいですよね。

また、選択肢が多く“決断疲れ”が起こりやすいのも現代の子どもたちの特徴です。情報が多いぶん迷いやすく、それがストレスになることもあります。

― 外では頑張って家で爆発する子には、どう関わればいいでしょうか?

幼児期なら「どうしたの?」と寄り添う声がけも良いですが、思春期になると“待つ・見守る”ことが大切になります。無理に聞き出そうとすると反発してしまうこともあります。

たとえば「話したくなったら言ってね」とだけ伝えておく。普段どおりに接しながら、子どもが話しやすいタイミングを待つ姿勢も必要だと思います。

怒りは悪い感情じゃない。向き合うことから始めよう

―最後に読者にメッセージをお願いします

イライラしても、怒ってもいいんです。怒りも大切な感情ですから、無理に我慢する必要はありません。大事なのは、“どうしてほしいのか”“どんな気持ちだったのか”を子どもと対話していくこと。誰でも練習すれば必ず、怒りと上手につき合えるようになります。ぜひ、安心して取り組んでくださいね。

『まんがでわかる 子どものイライラが消える本 13歳までに身につけるアンガーマネジメント』

著者: 戸田久実(とだ・くみ)
出版社: かんき出版

子どもの怒りの背景にある気持ちや、親子でできるアンガーマネジメントのコツを、まんがと図解でやさしく解説した一冊。気持ちの言語化、怒りの強さを数値で捉える方法、家庭でできるトレーニングなど“今日から使える実践”が満載です。
親が読むのはもちろん、まんが形式なので子どもにもわかりやすく、読み聞かせのように一緒に学ぶのもおすすめです。子どもはもちろん、親自身の感情を整える手がかりにもなります。

『まんがでわかる 子どものイライラが消える本13歳までに身につけるアンガーマネジメント』

企画・編集:&あんふぁん編集部、取材・文:やまさきけいこ

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