「友達に叩かれた!」と言われたら親がするべき対処法
わが子が、「お友達に叩かれた」と話したらとても心配になってしまいますよね。
今回は保育士としてたくさんの子どもと関わってきた経験を踏まえて、わが子が「友達に叩かれた」などのトラブルで落ち込んだ時、どう対応していったかをお伝えします。
子どもの話を聞いて不安に…
ある日、幼稚園から帰ってきた娘がしょんぼりしてこのように言いました。
「今日、お友達にお腹をグーで叩かれたの」
それを聞いて、まず「え!?お腹を殴るだなんて、ひどい」と驚きました。さらに話を聞いていくと、叩いたのは普段からよく遊ぶ女の子で、殴るなんて想像がつきません。けれど、落ち込んで涙を浮かべる娘がウソをついていると決めつけるワケにもいかず…。
子どもが友達に何かされたと話す時、親としてはとても心配になります。こんな時、私はいったん冷静になって保育園に勤務していたころ関わってきた子どもたちの様子を思い浮かべるようにしていました。そして、娘にとってどうしたら一番よいかを考えていました。
まずは親が落ち着くこと
まず、自分が落ち着くために、この年齢の子どもたちのコミュニケーション能力を想像します。気持ちをうまく言えない子、つい口調がきつくなってしまう子、口より先に手が出てしまう子…どの子もまだ未熟で、集団生活の中でコミュニケーションの練習をしている最中です。だから友達とのやりとりの中で、つい手が出てしまうことはよくあることです。
今回の場合も、友達が「娘にいじわるしてやろう」と思ってしたことではなく、相手も必死にコミュニケーションをとっているのかもと想像しました。まずは親が、相手は「悪意から叩いたのではないかもしれない」と頭に入れておくと、不安や怒りが和らぎ、冷静に考えられると思います。
落ち込んでいる子どもへの対応は?
●じっくりと状況を聞く
親が落ち着けたら、子どもが忘れないうちに話をじっくり聞いていくようにします。誰に、いつ(なにをする時間?)、どこで、どうして、先生は見ていた?などカンタンに状況を整理しておきます。
善悪を評価しないように心がける
その時、「相手が悪い」「自分の責任」などと、善悪を評価をしないように心がけるようにします。子どもの話には、客観的視点がありません。自分がされてイヤだったことだけを話すということもよくあります。
安易に相手のせいにすると相手の気持ちを考える機会を失ってしまいますし、自分が悪いと言われればイヤなことがあっても親に話しにくくなってしまいます。
●子どもの不安に寄り添う
どんな状況であったにせよ、子ども自身はいじわるされたと感じ、とても不安に思っています。「叩かれたらイヤだよね」「悲しかったね」など、気持ちに寄り添う言葉をかけ、心のケアをしてあげることが重要だと思います。ぎゅっと抱きしめたり、身体をさすってあげたりするのも安心します。
好きなおやつを食べさせたり、思いっきり好きな遊びをする時間をとったりして、気分転換をさせることもしていました。
このように関わっていくことで、子どもはイヤなことがあっても「また明日がんばろう!」と前向きになれます。
園内でのことは先生に確認する
子どもが落ち込んでいることは、園の先生にも伝えるといいと思います。先生に報告するときは、叩かれた時の詳しい状況と子どもの感じていることを伝えることがポイントです。
先生が状況を知っている場合は詳しく教えてもらうと、わが子へのフォローがしやすくなります。先生が見ていなかった場合は、両者から話を聞いて適切な対応をしてくれます。もし相手が一方的に叩いていることがあれば、相手に指導をしてその後も様子を見てくれるはずです。
「これくらいのことで…」と思わずに、先生に伝えておくと安心です。先生としてもクラス全員の様子をすべて把握するのはとても大変なこと。親からの報告は子どもの気持ちに寄り添う助けになります。
●娘の件で園の先生の対応は…?
その後、娘の一件がどうなったかお伝えします。
次の日、先生に確認した結果、「早い順で列に並ぶ際、友達が割り込んでしまった。それを娘が注意して列から押し出そうとしたら、友達が抵抗して、こぶしが娘のお腹にぶつかってしまった」ということがわかりました。確かにその手はグーで握っていたので、娘はグーで叩かれたと話したのです。故意にお腹を殴ったのと、当たるのはかなりイメージにずれがありますよね。
先生は改めて、娘には「やさしい言葉で伝えること」指導し、友達には「割り込みをしないこと」を指導し、娘に痛い想いをさせてしまったことをしっかりと謝らせてくれました。
少しずつ自分でトラブルを回避できるように
この一件ですぐにトラブルがなくなったというわけではなく、何度も同じ友達と口ケンカをすることはありました。その時も、家で状況を聞いておくこと、子どもの不安に寄り添うこと、あまりに落ち込んでいる様子があれば、その都度先生に伝えていきました。
しばらくすると、娘はその友達との距離感をつかんだ様子。仲良く一緒に遊ぶこともありますが、他の友達と遊ぶ時間も増え、その子とはトラブルなく関われるようになりました。
友達とぶつかることで学べることもある
園にはいろいろな子がいて、いろいろな考えがあります。多様性を知り、自分がどう立ち振る舞うかを身に着けていくのが、集団生活をする大きな意味だと思います。コミュニケーション能力を身につけて行く過程で、友達とぶつかりイヤな想いをすることは必ずあります。
その時、親がまずできるのは、子どもを安心させ、心のエネルギーをチャージしてあげることだと思います。私も渦中にいる時は、娘のことが心配で仕方なかったのですが、親はできる限りどーんと構えていることが大切だと思います。親自身も、信頼できる人に話を聞いてもらったりして気分転換をしながら、不安を乗り越え気長に見守っていきたいですね。