「忘れ物」の多さに困ったら?対応のヒントと、忘れ物をした時こそ伸ばしてあげたい能力とは

「忘れ物」の多さに困ったら?対応のヒントと、忘れ物をした時こそ伸ばしてあげたい能力とは

「忘れ物が多くて困っています。学校からの大切なお知らせを出し忘れたり、必要な持ち物を準備したのに忘れたり。いつまでも親が準備していては、子どものためにならない…と思ってたくさんサポートしたけれど、これ以上どうしたらいいですか」。こんなお悩みをいただくことがあります。
スクールカウンセラー、発達凸凹支援コンサルタントの立場から、忘れ物について、今からできることをお伝えします。

困った!わが子の忘れ物

・朝、水筒を渡したのに…持って行ってない
・また上履きを忘れている
・ランドセルの底から、大切なお知らせが出てきた

「もう、また忘れてる!」と思ってしまうほど、子どもの忘れ物エピソードってたくさんありますよね。絶対忘れないように玄関に置いて対策をしたけれど、全く気づかずに出発し、後で置き去りにされた荷物を見つけたときは、がっくりする気持ちになりますよね。

忘れ物を減らす事前の対策は十分したけれど「もう打つ手がありません!」「これ以上、何をサポートしたらいいですか?」と困り果てたとき、私たち保護者は何ができるのでしょうか。

それは誰の困りごと?

子どもが忘れ物をするたびに、親としては「こんなに忘れ物ばかりして、困ったなぁ」と、感じてしまいますよね。その気持ちを少し深掘りしてみると…

・子どもの将来が不安
・子どもをきちんと見ていない親だと思われるかもしれなくて、不安
・子どもが怒られるかもしれないから不安

など、「忘れ物をして実際に困った」というよりも、忘れ物によって子どもがどう評価されるか、そして保護者である自分がどう見られているかという「不安」が背景にあることがわかります。

子どもが忘れ物をしたという事実の上に、親として抱く不安を重ね、その二つを一緒に考えてしまうことがありますよね。そんな時は、「これは誰の困りごとだろう?」と今の悩みを一歩引いた視点でとらえることをオススメします。

忘れ物をしたとき、子どもはどう過ごしている?

忘れ物に気づいたとき、子どもたちは学校でどのように過ごしているでしょうか。

・先生に忘れ物をしたことを伝えられている
・周りの子に貸してもらえている
・助けてもらって「ありがとう」が言えている

たとえ忘れ物をしても、先生やクラスメイトに「ヘルプ」がうまく出せていたら、忘れ物への対処ができているといえますよね。忘れ物をしないことはもちろん素晴らしいことですが、忘れたとき周りに助けを求める力は、子どものうちにどんどん伸ばしてあげたい力です。

そして、周りに助けてもらった経験は、忘れ物以外で困ったとき周りを頼る力になりますし、誰かが困っている時に人助けができることにもつながっていきます。

特性はなおそうとしなくてOK

どうしても、短所やネガティブなイメージを抱いてしまう「忘れ物」。「忘れ物をしやすいのは、お子さんの特性の一つです」と言われると、親として「どうにかできないのかな」と焦る気持ちがありますよね。

でも、「忘れ物をしないように」と必死になって育てると、親子共にしんどくなってしまいます。凸凹の凹んでいるところだけをなおそうとするのは、とても難しいのです。だからこそ、親子で「どんなことができるか」を考えてもらいたいと思います。

そのための一歩として、忘れ物が多く自分が困っていることに気づくという自己理解が大切になります。たとえば、どんなときに忘れ物をしやすいか知ることで、忘れにくい工夫を考えることができますよね。

また、忘れ物に気づいた後、どうすれば困らないか考えると、「周りを頼る」スキルが必要だとわかります。今できていることや、凸を伸ばすことに注目するとヒントが見つかりやすくなりますよ。

「ノウハウをためる時期」と考える

忘れ物をしやすいのは特性だから、気にしない!と開き直ってるわけにはいきません。毎日忘れ物が続くとウンザリしてしまうのも事実。そんな時は「今は、ノウハウをためる時期!」と考えてみるとGOODです。

「忘れっぽい」という癖をよく観察し、

・できることを知る
・自分に合った工夫をしてみる
・試行錯誤を繰り返す
・人への思いやりを練習する

忘れ物という失敗を、良い経験に変えていけるチャンスがたくさんあると考えるとポジティブになれますよね。トライ&エラーを続けながら、忘れ物対策のスキルを高めていくことができたら素敵ですよね。

忘れ物対策アイデアワーク

ここまで、子どもの忘れ物について書いてきましたが、ママ・パパ自身は日ごろどんな対策をしているでしょうか。自分がこれまでやってきたことや、職場や周りで取り組んでいることなどを、どんどん書き出してみます。

自分が忘れ物をしないために工夫していることを書き出す

できるだけ具体的に書くことで、「こんなこともできるかも!」「あれも忘れ物対策になるかも」とアイデアが広がってきます。

自己理解・他者理解ワーク

周りに助けてもらうスキルを身につけるためには「自己理解」と「他者理解」がキーワードになります。忘れ物に限らず、「自分の苦手」をみつめ、深掘りして考えてみるワークになります。一人でもできますが、家族で一緒に取り組んでもらえたらうれしいです。

ワーク1

周りに理解してもらいたいときに、助けてもらいたい特性を書き出す。

たとえば…

・初対面の人と話すことが苦手なので、保護者会など集まったときは声をかけてもらえるとうれしいです。
・話をまとめることが苦手なので、質問したり確認しながら聞いてもらえると助かります。

といった感じで「△△が苦手なので、〇〇なときは〜〜してもらえるとうれしいです」という形で書きます。

ワーク2

得意に感じることで、人を助けられる特性を書き出す

次に、自分が得意なことに注目してみます。たとえば…

・黙々とした作業が得意です。人手が足りないときはぜひ声をかけてください。
・スポーツが得意です。体を動かしたいときや、リフレッシュしたいときは声をかけてください。

など、「〇〇が得意です。〜〜な時はぜひ声をかけてください。お手伝いします」といった形で書きます。書き出した内容を家族でお互いに伝えてみると、「そんなふうに考えていたんだ」と新たな発見がありそうですよね。

これは困ったとき「周りに助けてもらうスキル」を身につける練習にもなります。「忘れ物」という困りごとをきっかけに、親子で自己理解を深めながらコミュニケーションが取れたらいいですね。

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公認心理師・スクールカウンセラー・発達凸凹支援コンサルタント西木 めいの画像

担当カテゴリー

子どもの健康・発達

公認心理師・スクールカウンセラー・発達凸凹支援コンサルタント 西木 めい

大学教育学部(特別教育専攻)卒業。小学校の通常学級の担任を8年、特別支援学校(小学部) の担任を5年、自治体の就学支援委員会(就学相談)の調査員、特別支援教育コーディネーターを経験。
「優秀な同僚の先生たちが、保護者と揉めて心を病んで、どんどん学校を辞めていく現状」を見て、専門職であるスクールカウンセラーになることを決意。現在は、小学校と中学校のスクールカウンセラーとして、親子や先生のカウンセリング、学校内の環境調整のコンサルティング、不登校や登校しぶりの再登校のサポートなどを行う。
一方で、SNSを通じた「発達凸凹支援コンサルタント」として、これまで2300人以上のママ・パパ、先生のお悩み解決コンサルを行いながら、発達凸凹っ子のママや、子どもの不登校・登校しぶりに悩むママに向けたオンライン講座、小学校の保護者100名以上が集まる子育て講演会などを開催。特別支援教育が「教育の一番の根本」であることを啓発している。2児の母。著書に『発達障害のある子を支える担任と保護者の連携ガイド 』(明治図書)がある。

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