何でも口に入れてしまう小2の息子。どうしてでしょうか?

Q 小2の息子が何でも口に入れる癖があります。落ちているゴミまで口に入れます。どうしてなのでしょうか? また、どうしたらいいのでしょうか?

4月で小学2年生になる息子が、いまだに何でも口に入れる癖がやめられず困っています。
鉛筆や手さげの持ち手など、身の周りにあるものだけでなく落ちているゴミや手すりを触ったあとの手など、とにかく何でも口に入れます。何度言ってもやめる気配がありません。どうすればよいのでしょうか?(ゆうママ)

A 同じような子を担任したことがあります。その時の気持ちは…?

私が担任した小学校3年生の子どもの中に、この相談例のように「何でも口に入れる男児」がいました。
幼稚園の時代からやっていたそうです(幼稚園からの申し送り)。おりに触れては、鉛筆や消しゴムを食べてしまいます。下敷きもかじってしまいます。もちろん、休み時間には机と机の間に置いているゴミなども食べてしまうのです。
また、授業中には机をかじっています。イスを少し後ろに引いて、机をガジガジかじりながら授業を受けているのです。注意してもやめません。あきれて、注意しなくなりました。
しばらく様子を見ていたら、ふと気がついたことがあります。それは、ゴミを食べてクラスのみんなが「ウワ~、きたな~い!」などと言うと、ニコニコしているのです。「ゴミを食べて、みんなに『きたない』と言われると喜ぶ」ということが理解できなった私は、本人に聞いてみることにしました。
すると、しばらく黙っていましたが、次のようなことを話し始めてくれました。
「幼稚園の時から、いろいろなものを食べていたんだ。ゴミとかを食べるとみんなが『ウワ~』と言ってかまってくれる。だから、やっていたんだ!」
と言うのです。
きっかけを聞いてみると、次のように語ってくれました。
「幼稚園の時に弟が生まれてさみしかった。だから、始めたんだ。すると、お父さんやお母さんが僕を見てくれる。だからやっていたんだけど、そのうちやめられなくなったの。それに、小学校に入ってもみんなが反応してくれるのが、うれしかったんだ!」

その後、「そんなことをしなくても、先生は君のことが好きだよ!」と話をし、その行為をした時にも、「何かあった?」と、必ず理由を聞くようにしていくうちに、行為そのものが消えていったのです。

「異食行為」には理由がある

こうしたさまざまなものを食べてしまうのを、「異食行為」と言います。こうした行為は、何かしらの原因があります。発達障害の一種と思われていますが、私が担任した子どもの場合には、行為が消えていっていますから、ストレスや「自分を向いてもらいたい」という動機が原因だったように思います。
子どもは、大人や友だちなど他者の気を引くためには何でもする存在なのです。子どもは、他の人の愛情がなくては、生きていけないのです。私が担任した子どもの場合は、弟が生まれ、自分に気を引きたいということが、もともとの原因でした。
だからこそ、「異食行為をしなくても、君のことを好きだよ!」「どんな行為をしても、君のことを認めているよ!」というメッサージを伝えてあげることが大切なのです。
相談者さんのお子さんも、気を引きたい理由がある可能性があるように思います。思い当たらなかったとすれば少し観察していくうちに気が付くこともあるので、時間をかけてみてほしいと思います。
子どもは何も理由なく、そうした奇妙な行為はしないのです。子どもは、無限の愛を親や他人から求めます。でも、愛は無限ではなく有限なものです。有限の愛で我慢できるようにしていくためには、親がきちんと子どもに語っていくことが必要です。
正直、子育ては大変な行為なのです。でも、だからこそ丁寧に関わっていくことが大切なポイントになるのです。

 
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プロフィール

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大学教授

増田修治先生

白梅学園大学子ども学部子ども学科教授。
1980年、埼玉大学教育学部を卒業後、埼玉県の小学校教諭として28年間勤務。
若手の小学校教諭を集めた「教育実践研究会」の実施や、小学校教諭を対象とした研修の講師なども務めている。
「笑う子育て実例集」(カンゼン)、「『ホンネ』が響き合う教室」(ミネルヴァ書房)など、著書多数。

ライター

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&あんふぁん編集部 &あんふぁん編集部

「子育ての迷いに、頼れるコンパスを。」子育て中のママ・パパの気持ちを楽にする記事を発信中。未就学児〜小学生を子育て中の現役ママ・パパも多い編集部です。

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