名前を呼んでも振り向かない!…もしかして発達障害?

Q.もうすぐ3歳になる子どもですが、名前を呼んでも振り向きません…。自閉症など発達障害も疑っていますが、検査は半年後。それまでの間、何もせずに見守るだけしかできないのでしょうか?

日本で自閉症などの診断が医療機関から明確に出るのは3歳ごろと言われています。検査の予約も取りづらく、半年以上先ということも多いようです。その間、かわいいわが子のためにできることはないのか、多くの親御さんが悩ましい思いを抱えていますよね。
何か行動を増やしたり減らしたりするためにできることはないか考えるとき、知っておくとっても役に立つのが、「行動分析学」の知識。ここでは、この「行動分析学」を生活に応用する「ABA(応用行動分析学)」の視点で、「名前を呼ばれたら振り向く」行動を増やす、積極的な働きかけを紹介します。

子どもの課題を分析しよう!

さて、取り組みを始める前にまず、「名前を呼ばれたら振り向く」ことができるためには、大前提としてどんなスキルが必要なのか、考えてみましょう。

・耳が聞こえていること/音の聞こえた方向を理解できること
・声や言葉に反応できること(「あ!」の声掛けに振り向く/声や指差しの方を見る)
・「名前」が自分を呼ぶものであると理解していること

このように、ひとつの行動に見えることを、いくつかの行動の連鎖に分解し、明確にリストアップすることを、ABAでは「課題分析」と言います。課題分析をしたら、次はお子さんがどの部分につまづきがあるのかを観察します。まずシンプルに「あ!」と声をかけたとき、振り向いたり、声の先や指差しの先を見るなどの反応はありますか?

聞こえに問題がないのに声に反応しないなら、声や言葉に「反応する」行動がまだ習得できていないということ。そこで「あ!」と指差した(あるいは目線の先の)“同じものを見る(「共同注視」といいます)”練習をしていきます。

やり方ですが「行動分析学」には行動の法則として、「行動のあとに良い結果があるとその行動が増える、維持される」“強化”という行動の原理があります。何か行動を生じさせたいときには、この原理に沿って対応します。

この場合、たとえばお子さんの好きなおもちゃなどを視界の正面30センチ程度のところに置き、「あ!」と言って指をさします。「あ!」の先を見たら好きなおもちゃがあった(よいことがあった!)という状況を意図的に作るわけですね。このとき、「うわぁ見つけたね!」など笑顔で楽しく盛り上げると、好きなおもちゃと笑顔がペアリングされて笑顔が好きになり、笑顔のママも好きになる(他者への興味が育つ)ことが多いので、ぜひ大げさに盛り上げてみて。
そして、「あ!」の声掛けで反応できるようになったら「見て!」でもできるように同様にすすめます。さらに、最終的には「〇〇ちゃん」の言葉かけで振り向くように変えていきます。名前を呼んで反応したときには、ふれあい遊びが好きなお子さんなら、ハグをしたりコチョコチョ遊びをしたりするのも、とてもうれしい良い結果になりますね。

ちなみに、最初に視界内の正面に置くのは、一番反応しやすく、成功しやすい(好きなおもちゃにたどりつく)から。必ずよい結果に結びつくようにすることが大切です。できるようになってから、少しずつおもちゃの距離を遠くし、方向(横、後ろへ)を変えて、指や目線の方向に視線を向けられるように練習していきましょう。

さて、最後の「名前が自分を呼ぶものと理解していること」ですが、これには「ものに名前があると理解している」など、また違ったステップの確認が必要で、アプローチが異なります。「名前を呼ばれたら振り向く」という今回の目標行動を習得していく過程で多くのお子さんが名前を自然に覚えた、ということが多いですが、もし覚えられなかったら、物の名前を覚えるのと同じアプローチをしていきます。例えばりんごを好きなお子さんが「りんご」の言葉を覚えるとき、テーブルにりんごのほかバナナ、みかんなど2、3種類を並べておき、「りんご」と言ったらりんごを選ぶ、といった練習をするのですが、そのときも、正解したら大好きなりんごが食べられる、というように進めていくといいですね。

子どもの発達が気になる方へ オンライン・イベント3月27日(日)に開催

この春、ABAを知りたい人や実践しているというご家族、支援者、そしてABA実践家の先生方を繋いだイベント「歩こう話そうTALK&WALK2022 発達支援フォーラム」が開催されます。主催者のABA SPEAKS(https://www.abaforeverybody.org/)も、発達障害を持つ子どもの家族や支援者が集まって情報発信している団体の1つ。誰でも参加できる無料のオンラインイベントですので、ぜひ気軽にご参加ください。

■「歩こう話そう TALK&WALK 2022~発達障害支援フォーラム~」
日時:2022年3月27日(日)10:00-16:30
会場:オンライン (JICA横浜より生配信)
後援:神奈川県教育委員会・JICA横浜
協賛:グリーンバード横浜南・食支援ネットかながわ

<プログラム>
10:00-10:20 オープニング
10:20-11:00 演題1「発達障害に関する最近の政策動向」(仮題)
加藤永歳 (厚生労働省 障害児・発達障害者支援室 発達障害対策専門官)
11:00-12:30 演題2「ABA療育『ここが知りたい』に答えます!」
伴友紀(BCBA認定行動分析士、公認心理師)
藤坂龍司(NPO法人つみきの会・ABA SPEAKS代表)
ゲスト:井上雅彦(国立大学法人鳥取大学医学部教授)
13:00-14:30 演題3「ABA療育&ペアレントトレーニング研究最前線」
井上雅彦 (国立大学法人鳥取大学医学部教授)
14:35-16:05 演題4シンポジウム「医療におけるABA・日本での展望」
星野恭子 (医療法人社団 昌仁醫修会 瀬川記念小児神経学クリニック院長)
藤中秀彦 (国立病院機構新潟病院臨床研究部長)
16:05-16:30 クロージング/グリーンバードさんと近隣クリーンアップ作戦!ゴミ拾い

▮詳細・申し込みはこちら
歩こう話そう TALK & WALK 2022 ~発達障害支援フォーラム~ | Peatix

▮問い合わせ 
abaforeverybody@gmail.com
※件名にTALK&WALK2022の件 とご記入ください

ライター

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&あんふぁん編集部 &あんふぁん編集部

「子育ての迷いに、頼れるコンパスを。」子育て中のママ・パパの気持ちを楽にする記事を発信中。未就学児〜小学生を子育て中の現役ママ・パパも多い編集部です。

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