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ネガティブ発言が多い息子、どうしたらいい?

ネガティブ発言が多い息子、どうしたらいい?

心理臨床家、専門行動療法士、臨床心理士の奥田健次先生が、子育てのお悩みを「行動」に焦点を当ててアドバイスします。

うちの息子は、幼稚園時代から「ぼく、みんなに嫌われているんだ」とか、「友達がいないんだ」などのネガティブ発言が多いのですが、幼稚園の先生や小学校の先生に聞いても、いつも友達に囲まれて楽しそうにしていると言われるし、公園でもみんなで仲よく遊んでいます。
どうして、ネガティブな発言が多いのでしょうか?(小学1年生、男子)

答えは、簡単。

ネガティブな発言が「強化」されているからです。行動分析学ではそのように考えますし、そうした行動が増えたり減ったりする原理を問題解決に役立てることもできます。

問題解決に役立たない考え方としては、こうした行動を「性格」とか「人格」のせいにしてしまうことです。「弱気な性格だから」とか「甘えがあるからだ」と考えがちですが、そんな発想法では何の解決策も出てきません。

さて、行動分析学の「強化」という専門用語ですが、ここで詳しく用語解説することはやめておきましょう。

わかりやすくいえば、「ネガティブな発言(行動)をした直後に、何らかのメリットが生じている(強化)」ということです。お子さんの場合、何がメリットなのでしょうか。

多くの親にとって盲点になっていることですが、ネガティブな発言をするとそれに自然と応じるその対応が、子どもにとってのメリットである可能性が非常に高いということです。

「ぼく、みんなに嫌われているんだ」と言ったら、親はどのように応じてしまうでしょう。お母さんは「学校でも公園でも仲よく遊んでいるのになあ」と思っているわけですから、当然「そんなことないよね? 仲よしがいっぱいいるでしょ? 嫌われてなんかいないよ!」などのように励ますに違いありません。もし、子どもが「本当は嫌われているんだ!」などと主張したら、挙げ句の果てに親は「でも、お母さんは○○(子どもの名前)のこと大好きだよ!」と慰めてあげるかもしれません。

こうした「励まし」や「慰め」などの親の対応が、そのときの行動を強化しているのです。これは本当に多くの方の盲点となっています。こんなことは珍しいことではなく、大人になっても「クヨクヨする行動」「自分を否定する発言」「すぐにすねる言動」などを頻繁にする人はするので、あまりに長続きするから「性格のせい」にして片づけてしまいたくなるものです。

こうした行動の例を詳しく図式化して解説したものに、拙著『メリットの法則』や『世界に1つだけの子育ての教科書』がありますので、参考にして下さい。

直し方ですが、これも子どもに合わせて色々な方法があります。

お子さんはまだ小学1年生です。子どもからネガティブな発言をし始めてしまうと、親の対応は後追い型になってしまうので、よろしくありません。公園で遊んでいた様子をしっかりと観察し、その帰り道に「△△くんと遊んで、楽しかったなぁ」とお子さんが言うべき(言って欲しい)ポジティブな発言を、お母さんが言うようにしましょう。お母さんが言うんですよ。

こんなアドバイス、聞いたことないでしょう? そらそうよ。いま、作ったからね(笑)。

アイデアの浮かばない専門家は「待ちましょう」と言うかもしれませんが、待たなくていいです。待たないほうがいいです。待つとネガティブ発言が出てしまうわけですから。英語の先生になったつもりで「リピート・アフター・ミー(さあ、真似して)」って感じでポジティブな台詞を覚えさせるつもりで繰り返して下さい。お母さんが「△△くんと遊んで、楽しかったなぁ」と言って、小声で「真似して」とささやいて、またお母さんが「△△くんと遊んで、楽しかったなぁ」と言う。おうむ返ししてくれるまで、言って下さい。

こんな方法を何か月も繰り返して、自分からポジティブ発言が言えるようになってきたら、「リピート・アフター・ミー」をやらずに様子をみて下さい。もちろん、ポジティブ発言が出たときには会話が盛り上がるようにしていくことは言うまでもありません。
ネガティブ発言に「励まし」や「慰め」を与えて強化することや、ましてや人格のせいにして叱ったりイヤミを言ったりしてこじらせるよりも、はるかに私の馬鹿らしいような方法のほうが明るく楽しい結果を生み出します。

 
 
【今回のコラムで紹介した本】
『メリットの法則 ?行動分析学・実践編』(集英社新書)
『世界に1つだけの子育ての教科書 -子育ての失敗を100%取り戻す方法-』
(ダイヤモンド社)

【新著の紹介】
飛鳥新社から『拝啓、アスペルガー先生【マンガ版】―異才の出張カウンセラー実録』が出版されました。マンガ版です。書籍版も絶賛発売中です。

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専門行動療法士、臨床心理士

奥田健次

発達につまずきのある子とその家族への指導のために、全国各地からの支援要請に応えている心理臨床家。世界各地から招かれる国際的セラピストである。行動上のあらゆる問題を解決に導くための洗練された技術と、子ども一人ひとりに合わせて完全にオーダーメイド化された奇抜でユニークなアイデア、指導プログラムの緻密さについて、国内外の関係者から絶賛されている。1999年・内山記念賞(日本行動療法学会)、2003年・日本教育実践学会研究奨励賞、2008年・第4回日本行動分析学会学会賞(論文賞)を受賞し、行動科学系の二大学会で初のダブル受賞者となった。
日本行動分析学会常任理事。日本子ども健康科学会理事。桜花学園大学准教授などを経て、2012年4月より行動コーチングアカデミー代表/学校長として浅間山のふもと、西軽井沢に移住。子ども、高齢者、動物らと共に高原での自給自足的生活を目指した試行錯誤を繰り広げている。桜花学園大学大学院客員教授等を兼任。現在、長野県に新しい私立幼稚園(行動分析学を用いたインクルーシブ幼稚園)を設立するために精力的に全国的な活動をしている。
著書に「子育てプリンシプル」(一ツ橋書店)、「叱りゼロで「自分からやる子」に育てる本」(大和書房)、「メリットの法則 行動分析学・実践編」(集英社)、「拝啓、アスペルガー先生 ―私の支援記録より」(飛鳥新社)などがある。

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