“おうち性教育”って何?いつから伝える?子どもにきちんと伝えたい、助産師が教える「性」の話
“おうち性教育”という言葉を知っていますか?おうち性教育とは、お子さんがまだ幼い頃から積極的に性に関する教育に取り組むこと。幼少期から性教育に触れることで、子どもたちが自らの心と身体を守る術(すべ)を身につけることに役立ちます。
今回から、助産師の石嶺みきさんによる、子どものための「性」についてのコラムがスタート。この機会に、大切な知識をアップデートしましょう。
はじめまして。コラムを担当する石嶺みきです。長く不妊治療の末に妊娠し、出産時や産後にとても優しくしてくださった助産師さんにあこがれて、子どもが1歳のときに看護学校を受験。4年間ママ看護学生となりこの道を目指しました。2024年4月に性に関する絵本を出版し、親子向けのデリケートゾーンケア講演会などをしています。
助産師は「新しい生命を取り上げる」ことから始まって、生まれてきた赤ちゃんへの授乳や育児、産前産後ケア、さらには思春期ケアや教育、不妊相談、更年期の健康相談などなど、まさに「すべての女性の人生の味方」なんです。子育てにはさまざまなお悩みがありますよね。みなさんからの声を聞きながら一緒に考えていけたらうれしいです。よろしくお願いします。
おうち性教育って何?
おうち性教育とは、お子さんがまだ幼い頃から積極的に性に関する教育に取り組むこと。「性教育」と聞くとついつい“恥ずかしいこと”や“いやらしいこと”と考えてしまい、子どもたちから遠ざけようとする空気があり、なんとなく“タブー”のように口に出してはいけないことのように思っている人さえいます。
でも、その考えは少し改める必要があるかもしれません。なぜなら、幼少期から性教育に触れることは、子どもたちが自らの心と身体を守る術(すべ)を身につけることに役立つからです。
プライベートゾーンって?
皆さんは、プライベートゾーンやプライベートパーツという言葉をご存じですか。自分の身体はもちろん全ての部分が大切ですが、その中でも特に他人が自分の同意なく見たり、触ったりしてはいけない部位のことを指します。具体的には、水着で隠れる部分(胸、おしり、性器)と口です。
皆さんは、自分のプライベートゾーンに関して普段から意識して生活していますか。例えばお風呂に入った時には、これらの部位はどのようにして洗っているでしょうか。また、何か特別なお手入れをしていますか。そう問うと、多くの方は「そんなこと考えたことない…」や「なんとなく適当に…」などとおっしゃいます。
実は、性教育とは自分の大切な場所、つまりプライベートゾーンについて正しく理解し大切にケアすることから始まるのです。子どもたちに正しい性教育を伝えるにも、まずはママやパパたちにプライベートゾーンの大切さを知っていただき、その正しい知識を子どもたちに伝えていくことが欠かせません。この点において「おうち性教育」は、家族みんなで性について気軽に話せる土台(関係性)作りの役割を果たしてくれます。
おうち性教育って、いつ頃伝えたらいいの?
こんな質問もよく受けます。私は、お子さんが自分の身体に興味を持ち始めた時がベストだと考えています。具体的には2歳頃でしょうか。この頃になると、子どもの心は急速に成長します。自分という意識が強くなり、何に対しても自分でやりたがる、したいことや好きなことがはっきりしてくる時期ですが、それはひとえに自立心が芽生えてきている証です。
この時期からおうち性教育の最初のステップとして、自分のプライベートゾーンの知識や扱い方を学ぶことは、その子の自立心を育てる絶好の機会になります。また親にとっても、お子さんのプライベートゾーンを確認することは、感染症や形成不全などのトラブルに対する早期発見にもつながります。
子どもたちの日常生活の中に「おうち性教育」がしっかり根付けば、3歳頃になるとプライベートゾーンの場所と名前が一致するようになり、4歳頃にはそこが大切な場所だという意識が芽生えてくるはずです。
おうち性教育のファーストステップ
乳幼児期(0~2歳頃)
おむつ替えで身体に触れたり、お風呂で身体を洗うときは「だいじな場所をきれいにするよ。」など声をかけたりしましょう。
幼児期(3歳頃~就学前)
幼児向けの性の絵本などを、一緒に読み聞かせしながら伝えるといいですね。
次回は、「幼児期の男の子」のためのおうち性教育について、お伝えします
ナビゲーター
担当カテゴリー
子どもの健康・発達
助産師・看護師・栄養士 石嶺みき
助産師、看護師、栄養士。ミキズハウス助産院院長。株式会社FM BIRD所属。不妊治療中に献身的に励ましてくれた助産師に強い憧れを抱き、出産後に看護学校に進学。助産師専攻科を経て助産師資格を取得。卒業後は大学病院産婦人科外来・病棟に勤務し多くの出産に立ち会う。
その後、保健センター勤務に転じ、産後のメンタルサポートや妊娠SOS相談窓口、新生児訪問、乳幼児健康診査なども行う中で、フェムケア教育の普及活動を思い立ち独立。一般の方だけでなく、看護学校の教員や助産師、看護師などを対象とした講習会などを開講。現在は“全ての世代に、泌尿生殖器ケアを通して幸せになってもらいたい”という信念のもと、「フェムケア」「おちんちんケア(オムケア)」「思春期性教育」をはじめとする講演を広く行うなど、積極的に活動中。
今年4月出版「ぞうちんとぱんつのくに」原作・監修(KADOKAWA)