ちょっとの工夫でこんなに違う 気持ちを変える言葉掛け

2/2ページ
ちょっとの工夫でこんなに違う 気持ちを変える言葉掛け

気持ちの切り替えがスムーズにできない…。
そんなわが子への対応のヒントを、公認心理師・佐藤めぐみさんが教えてくれました。

イラスト/杉浦さやか

試してみよう! ケース別、気持ちの切り替え方

子どもの気持ちを上手に切り替えるために、声掛けはとても大切。誰かに説得されると反抗したくなる心理を「心理的リアクタンス」と言います。この心理を理解した上で、どういった言葉を掛けると良いのかを紹介します。

case.1

子どもが熱中していることを無理やり中断させられたとき、いつまでも機嫌が直らない

先々の良いことを想像して、今我慢するという「満足遅延耐性」力が、まだまだ低いのが子ども。大人でも、ダイエットしているからとケーキを食べることを我慢できる人もいれば、できない人もいますよね。子どもであれば、目の前にある好きなこと・楽しいことに流れるのは当たり前。その方向を変えなくてはいけないのだから、少し言ったくらいですぐにやめられるわけではない、と理解しておきましょう。

その上で、声を掛けるときに気を付けたいのは、突然一方的に中断しないこと。まずは先を見越して前振りをしつつ、先々の楽しみを提示してみましょう。

[例]「18時からごはんだよ。タイマーかけておくから、鳴ったらテレビはおしまいね」

→タイマーが鳴る5分前に「あと5分でタイマー鳴るからね」と声を掛ける。このときは必ず、子どもと目を合わせて、聞いていることを確認しましょう。

→「18時だからテレビはおしまいね。きちんとごはんが食べられたら、食後に大好きなデザートがあるよ」

case.2

叱られると、いつまでもぐずぐずと気持ちを立て直せない

子どもを叱るとき、どんな言葉で叱っていますか? その子の行動を改めようとするあまり、子ども自身を否定していないでしょうか。「あなたなんかいらない」というような、子どもを全否定する叱り方をすると子どもも引きずりがちです。もし言い過ぎてしまった場合は、「ママが間違っていた、ごめんね」ときちんと謝りましょう。親の謝罪は、子どもが気持ちを切り替えるきっかけにもなります。そして、完璧にできていなくても、少し良くなった部分を認めてあげると、子ども自身に対する信頼感が深まり、次はもっと頑張ろうと感情をコントロールする意欲が高まります。

[例]「この間より短い時間で泣きやめたね!」「幼稚園のお支度、昨日よりテキパキできたね」など、小さな成長もどんどん褒めてあげましょう。

case.3

自分の思い通りにならない・こだわりが受け入れられなくて不機嫌に

生まれたばかりの子どもはとにかくかわいいもの。だから、好きなようにさせてあげないと傷つけてしまうのでは?と必要以上に丁寧に扱ってしまうことがあります。そうすると基礎的なしつけができず、感情を切り替える機会を得ないまま、園生活に突入してしまいます。結果、自分の思い通りにいかないことに子ども自身も折り合いがつかず、気持ちの切り替えがスムーズにできないことも。我慢を体験せずに育ってしまうと、ママ自身を追い詰めてしまうことになりかねません。子どもが負の感情を持つことをあまり怖がらないようにしましょう。

[例]「遊びたい気持ち、分かるよ。楽しいもんね。でも今はこれをする時間だよ」と、まずは受容する言葉を掛け、でも譲れない部分では毅然とした態度は崩さない。

→「じゃあ、今ママの言うことを聞いて褒められるのと、聞かないでずっとママがプンプンしているのと、どっちがいいかな?」「今日頑張って遊びをやめておうちに帰れたら、明日もこの時間に遊びに来られるよ」など、選択肢を与えて子どもに選ばせましょう。自分で決めた!と言う感覚に落とし込めると、子どもは行動に移しやすいです。

case.4

生理的欲求(食欲・睡眠欲など)が満たされないと、怒りだす

大人であっても、睡眠を削られればイライラしますよね。生理的欲求が原因で悪くなった機嫌は、その欲求を満たしてあげないことには変えることは難しいもの。だから、そのような状況に陥らないよう工夫するしかありません。

お腹が空くのが予想できる時間に子どもをおでかけさせるのならば、その前にごはんを食べる、などです。また、規則正しい毎日を過ごしている子の方が、機嫌が良いという研究結果もあり、就寝時間が遅いとぐずりがちになる傾向も。テレビやゲーム、スマートフォンなどに長時間触れて就寝時間が遅くなると、就学後に歯止めが効かなくなることがあります。園時代にスクリーンとの付き合い方をきちんと導いてあげることは、正しい生活習慣にもつながりますよ。

パパ・ママ注意 やってはいけないNG声掛け

【1】突き放し言葉

子どもが感情的になってグダグダしてしまうと、つい突き放すような言葉を使っていませんか? その子の存在を全否定する言葉はやめましょう。

[NGワード]

●「どこかに行っちゃいなさい」
●「あなたはもう、うちの子じゃない」

【2】過保護・過管理・過干渉

子どもにご機嫌でいて欲しいがために、先回りして手を出し、失敗を拭ってしまったりするのはNG。失敗を経験しないで育つことで、自立心が育たず、感情をコントロールする機会を失ってしまいます。「寂しい」以外の負の感情を持つことは、いけないことではありません。その状態から学び、自分で気持ちを切り替えるチャンスだと捉えましょう。

【3】選択肢を与えるときは「没収系」ではなく 「収穫系・報酬系」

気持ちを切り替えるための声掛けとして、子ども自身が決められるよう、選択肢を与えるのは良いことです。しかし、その内容が「片付けないと、捨てちゃうよ」という没収系はやめましょう。注意する割に結局捨てられないことが多く、「ママは本気じゃない」と話半分で聞くように。「片付けたら、ママと遊びに行けるよ」などの収穫系・報酬系にすると、子どもも受け入れやすいようです。

【4】物質的欲求を満たすのは、ほどほどに

おもちゃを買って~と言われるとつい買ってしまう…。このように、物欲が満たされすぎると「言ったら願いがかなう」と考えるようになり、感情のコントロールが苦手になることも。物を欲しがったら、例えば「お誕生日のプレゼント候補リスト」を子どもと一緒に作り、そこに書いてみましょう。リストを作るだけで気持ちが一時的に満たされます。そして誕生日前にそのリストの中から一つを子どもに選ばせるようにしましょう。

頑張るママ・パパに佐藤さんからエール!

園という集団生活の中で、わが子だけが気持ちを切り替えられていない場面に遭遇すると、周囲の目が気になってしまうことがありますよね。どうしてうちの子だけ…と自分を責めてしまう親御さんも多いようです。でも、切り替えの得意・不得意は、生まれ持った気質が理由の場合もあるので、自らを責め過ぎないでください。

そして子どもは、辛い・しんどい・嫌だ・やりたくないなどの負の感情と向き合うことで、たくさんのことを学びます。親がなんとかしなくては!と思わず、今まさに学習しているのだと考え、立ち直れた時にたくさん褒めてあげることで、良い循環・環境を作っていきましょう。

外出自粛などの行動制限で、他の子と会う機会が減っているかもしれません。でも、裏を返せばわが子に集中・知ることができるまたとない機会とも言えます。子どもの昨日と今日を比べて、ここがちょっとだけマシになった! そんな小さな成長を見付けて、どんどん褒めてあげてください。

2020年度のあんふぁんは、「幼児期の子どもが“今持っている力“を見つけて育てることが将来を生き抜く力になる」と捉え、「みつけよう コドモノチカラ」をテーマにさまざまな情報を発信していきます。

「あんふぁん」と姉妹誌「ぎゅって」、そして小学館の子育てメディア「HagKum」では、新しい時代の“つながり”を応援しています。今回は家族(=いえ)の応援がテーマです。

子どもの健康・発達:新着記事

電子書籍

幼稚園児とママ・パパの情報誌

親子の保育園生活を応援する情報誌