「すぐ教える」より「少し待つ」非認知能力を育む環境づくりのポイント

子どもを見ていると、「どうしてこんなに同じ遊びを繰り返すんだろう」「こんな遊び、意味あるのかな?」そんな風に感じること、ありませんか。けれど実は、遊びの中で子どもは、将来の学びや人間関係を支える、とても大切な力を育てています。今回は、「非認知能力」という少し難しそうな言葉を、毎日の遊びと結びつけながら考えてみたいと思います。
非認知能力とは
「非認知能力」という言葉は、少し専門的に聞こえるかもしれません。簡単に言えば、夢中になれる力・やり続ける力・気持ちを整える力・人と関わろうとする力といった、テストの点数では測れない“見えない力”のことです。
漢字や計算のように「できた」「できない」で分かれる力ではなく、毎日の経験の中で少しずつ育っていく心の働き、と言ってもよいでしょう。近年、この「非認知能力」は、「社会情動スキル」と呼ばれることも増えてきました。少し専門的な言葉ですが、意味している内容はとても身近です。
- 目標に向かってやり抜くチカラ
- 気持ちをうまく整えるチカラ
- 相手の気持ちを考えたり、協力したりできるチカラ
- 興味を持ったり、自由に考えたりできるチカラ
- 自分から話しかけたり、集団に入っていけるチカラ
- よく考えて行動し、「やってみよう」と踏み出せるチカラ
社会情動スキルは、こうした“生きる力の土台”です。実際に経済協力開発機構(OECD)やユニセフといった国際機関も、学力だけでなく、こうした力を子どもの成長に欠かせない要素として重視しています。つまりこれは、特別な考え方ではなく、世界的にも共有されている「子どもの育ちの基本」なのです。
教えなくても育つ力
ここで大切なのは、非認知能力の多くは「教え込む」ことで伸びるものではない、という点です。「もっと集中しなさい」「最後まで頑張りなさい」そう言われて自然にできるようになる子どもは、実はそれほど多くありません。
むしろ、夢中になって遊ぶ・うまくいかずに試行錯誤する・思い通りにならず感情が揺れる、こうした経験の積み重ねの中で、子どもは少しずつ「どうすればいいかな」「もう一回やってみよう」「悔しいけど…やめたくない」と、自分の内側で調整を始めます。
非認知能力とは、大人に言われて動く力ではなく、子ども自身の中から育っていく力なのです。
自由遊びと関わりのバランス
ただ遊んでいるだけで、本当に生きるためのチカラが育つの?と思われるかもしれません。「お医者さんごっこ」遊びを例にしてみましょう。
「お医者さんってどんなことをするのかな?」こんな子ども自身の問いかけの中で、相手の気持ちを想像する力や、興味を広げる力が育ちます。また、どちらが医者で、どちらが患者か。役割を決めるなかでも、自分の感情をコントロールしたり、自分から話しかける力が育まれています。
たかが遊びかもしれません。でも、こんな簡単な遊びのなかでも、生きるための心の土台が育まれているのです。では、「自由に遊ばせることが大事」と聞くと、「じゃあ放っておけばいいの?」と思われるかもしれません。もちろんそうではありません。大切なのは、「自由さ + 安心できる関係」 の組み合わせです。子どもは、安心できる大人や環境があってこそ、思いきり試すことができます。
失敗しても大丈夫、うまくいかなくても受け止めてもらえる、困ったら助けを求められる、そんな感覚があるからこそ、自由な遊びが「成長の場」になります。
大人が「手を出しすぎない」意味
私たちはつい、うまくいかないと助けたくなったり、効率のよいやり方を教えたくなったり、正解へ導きたくなるものです。けれど、少しだけ立ち止まって考えてみてください。すぐに手助けされた遊びは、大人にとっては親切でも、子どもにとっては「考える機会」を失うことがあります。
子どもが悩んでいる時間、試している時間、迷っている時間。これらは、実は非認知能力が働いている時間です。大人が「待つ」という行為は、何もしないことではなく、子どもの内側の働きを信じる関わりなのです。
今日からできる環境づくり
- 「すぐ教える」より「少し待つ」…「どうするかな?」と見守る時間をつくる
- 「結果」より「没頭」を大切にする…上手にできたかより、夢中になっていたかを見る
- 「感情の揺れ」を否定しない…悔しい・怒った・泣いたも、調整の練習
- 「遊びを削らない」…遊びは“ごほうび”ではなく“発達の場”
遊びの時間とは、ただ楽しんでいる時間ではなく、人生を支える力を育てている時間でもあります。
おわりに
非認知能力は、目に見えません。けれど、集中している姿、何度も繰り返す姿、うまくいかず感情が揺れる姿、そのすべてが、成長の途中の大切な姿です。「ちゃんとできているかな?」ではなく、「この子はいま、どんな力を使っているのだろう」...そんなふうに見てみると、遊びの風景は少し違って見えてきます。今日もまた、遊びの中で、見えない力は静かに育っています。
【参考になる情報】
OECD (2015). Skills for Social Progress: The Power of Social and Emotional Skills (https://www.oecd.org/en/publications/skills-for-social-progress_9789264226159-en.html)
UNICEF (2019). Global Framework on Transferable Skills
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