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帝王切開後の出産、どんな選択肢がある? 鈴木あきえさんが語る「TOLAC」と3度の出産

第1子は長時間の分娩を経て緊急帝王切開、第2子と第3子は「TOLAC(トーラック)」を試みた鈴木あきえさん。今回は、それぞれの出産を振り返りながら、TOLACを知ったきっかけや選ぶまでの葛藤、3度の出産を通して感じたことをお聞きしました。
【第1子】53時間に及ぶ陣痛の末、緊急帝王切開に
第1子の妊娠中は、経腟分娩で出産するものだと、なんとなく思っていました。自分が帝王切開になることはほとんど考えていなくて、出産は予定どおりに進むものだと思っていたんです。
ところが、実際に陣痛が始まると、私の骨盤と赤ちゃんの頭の大きさの関係や、子宮口の開き方など、さまざまな要因が重なり、分娩時間は53時間に。子宮口が9cmまで開いたところで、母体の体力低下と、赤ちゃんの状態なども踏まえ、緊急帝王切開で出産することになりました。
産後は自分を責めてしまうことも
帝王切開後は1週間ほど入院しました。私の場合は傷の痛みが強く、院内のコンビニへ行くだけでも、ひと苦労。入院中、経腟分娩をした方が自分より元気そうに歩いている姿を見ると、「子宮口が9cmまで開いていたなら、もう少し頑張れたのではないか」「もっと体力があれば経腟分娩ができたのかな」と、自分を責めるようになりました。産後のホルモンバランスの影響もあったと思いますが、当時は、出産が思いどおりにいかなかったことを、自分の力不足と結び付けて考えてしまっていたんですね。

体の痛みが和らぐにつれて、心も少しずつ元気に
術後の痛みは2カ月ほど続き、当初の予定よりも長く実家で過ごすことになりました。傷の痛みが和らぎ、思うように体を動かせるようになると、心も一緒に元気になっていったんです。そのときに「心と体はつながっているんだな」と、改めて感じました。そして、日々成長していくわが子を見ているうちに、「この子が元気でいてくれるなら、それでよかったじゃないか」と思えるようになりました。

帝王切開後の回復や感じ方は人それぞれ
帝王切開後の痛みや回復の経過には個人差があると思います。私の周りには、「痛み止めを使いながら過ごしたので、それほど強い痛みは感じなかった」「帝王切開でとてもよかった」と話す友人もいます。また、予定帝王切開は出産日があらかじめ決まるので、上の子や家族の予定を調整しやすいという面もあります。実際に、その点も踏まえて予定帝王切開を選んだ友人もいます。
私の場合は、帝王切開後の痛みが長引いた経験から、次はTOLACを試みたいと思いました。でも、これはあくまで私自身の経験と選択です。どちらの出産方法がよい、悪いということではないと思っています。

姉の経験を通して知った「TOLAC」という選択肢
TOLACを知ったきっかけは、姉の出産でした。
TOLACとは、帝王切開をしたことがある方が、その後の出産で経腟分娩を試みることです。(※1)
姉は第1子を緊急帝王切開で出産後、第2子のときにTOLACを試みました。私は、その決断に至るまでの様子や出産の流れを近くで見ていました。姉は、一晩ほど陣痛が続いた後、最終的には帝王切開になったのですが「挑戦したことに意味があった」と話してくれました。その姿に背中を押され、「私もやるだけやってみたい」と思ったんです。
調べるほど大きくなる不安。医師の言葉で決意が固まった
インターネットでTOLACについて調べると、さまざまなリスク(※2)に関する情報が目に入って、調べれば調べるほど怖くなりました。「よくお姉ちゃんは挑戦したな」と思ったほど。そこで、インターネットの情報で判断するのはやめて、妊婦健診の際に担当の先生へ直接相談することにしました。
診察で子宮の状態などを確認してもらい、先生から「TOLACを試みることが可能な状態です」と説明を受けました。(※3)
また、子宮破裂が発生する可能性があることなど、起こり得るリスクについても、資料を使って詳しく説明してもらいました。先生と話すなかで、どのような出産方法にもリスクがあることを改めて感じると同時に、「何かあったときは母体と赤ちゃんの安全を最優先に対応します」と言ってもらえたことが、大きな安心につながりました。
一方、夫は第1子の出産に立ち会い、陣痛や手術の様子も見ていたため、「そこまで頑張らなくても、いいんじゃない?」と心配していました。それでも、私が自分の希望や術後の痛みについて話すと、最後には「そこまで言うなら」と受け止めてくれました。
【TOLACについて監修医師注釈】
(※1)TOLAC(Trial of Labor After Cesarean)とは、帝王切開の既往がある人が、その後の出産で経腟分娩を試みることです。TOLACを試みた結果、実際に経腟分娩に成功した場合をVBAC(Vaginal Birth After Cesarean)といい、TOLACを選択しても必ず経腟分娩に至るわけではありません。分娩の途中で緊急帝王切開が必要になる場合もあります。帝王切開への切り替えは、母体と赤ちゃんの安全を守るために必要な判断となることがあります。
(※2)TOLACで特に注意が必要な合併症の一つが、子宮破裂です。日本の産婦人科診療ガイドラインでは、TOLACに伴う子宮破裂は約0.2~0.7%と報告されています。頻度は高くありませんが、発生した場合には母体の大量出血や赤ちゃんの低酸素状態など、母子双方に重大な影響を及ぼす可能性があります。
(※3)TOLACの適応は、前回の帝王切開での子宮切開法や手術歴、今回の妊娠経過、母体や胎児の状態などを踏まえて慎重に判断されます。また、万が一の事態に備え、緊急帝王切開などに速やかに対応できる医療体制が整っていることも重要です。
【第2子】「陣痛が来てくれてありがとう」と思えたTOLAC、経腟分娩での出産
私がお世話になった病院では、TOLACの場合、自然に陣痛が始まるのを待つ方針でした。そして、決められた日までに陣痛が来なければ帝王切開に切り替えると説明され、あらかじめ手術の予約もしていました。
そのため私は、ウォーキングやストレッチをしながら、毎日陣痛を待つことにしました。予定日頃に陣痛が始まったときは、怖いというよりも「来てくれてありがとう!」と思えましたね。
第1子のときは、陣痛に恐怖を感じていましたが、第2子のときは「この陣痛が来なければTOLACに臨めない」と思っていたので、感謝の気持ちで出産に臨めました。その違いがリラックスにもつながり、痛みの受け止め方もまったく違ったように感じます。
第2子を経腟分娩で出産したときは、出産から約2時間後に歩くよう促され、「もう歩けるんだ!」と驚きました。第1子の帝王切開後は傷の痛みが強く、回復に時間がかかった私にとって、その違いはとても印象的でした。

【第3子】2度目のTOLAC、22時間に及ぶ陣痛を経て経腟分娩に
第3子のときは、先生からも「今回もTOLACですよね」と声をかけてもらい、私自身も迷いはありませんでした。陣痛が始まってからは順調に進み、「あと数時間で生まれそう」と言われていたので、私自身も「今回は最短記録になりそう!」と思っていたんですね。
ところが、子宮口が8cmほど開いたところで、私の骨盤と赤ちゃんの大きさの関係から、赤ちゃんがなかなか下りてこない状態に。私がお世話になった病院では、TOLAC中に行える処置に制限があったため、そこからは経過を見守ることになりました。そして、陣痛が始まってから約22時間後、経腟分娩で出産しました。(※4)
同じTOLACでも、第2子と第3子の出産はまったく違い、赤ちゃんの大きさや状態などによって、一度として同じ出産はないのだと実感しました。
【TOLACについて監修医師注釈】
(※4)TOLAC中に行う処置や分娩管理の方針は、妊婦さんの状態や医療機関によって異なります。

どんな出産も、かけがえのない出産
第1子の出産後、帝王切開になったことで自分を責めてしまった私にとって、医師からかけてもらった忘れられない言葉があります。
「どれだけ陣痛が来るように頑張っても、決められた日までに来なかったら、それは赤ちゃんがその方法を選んだということだからね」
この言葉を聞いて、どのような出産方法になっても、そのときにできる最善の方法で赤ちゃんを迎えることが大切なのかもしれない、と思えるようになりました。
出産方法によって、頑張った、頑張らなかったということでは決してありません。帝王切開も経腟分娩も、赤ちゃんとママが無事に会うための出産だと思います。(※5)
これから出産を迎える方には、自分の希望や不安を医師や家族としっかり話し合い、医師の説明を踏まえて、納得できる方法を選んでほしいです。そして、どのような出産になったとしても、赤ちゃんと初めて過ごすかけがえのない時間を大切にしてほしいと思います。
【TOLACについて監修医師注釈】
(※5)予定反復帝王切開にも手術に伴う合併症があり、帝王切開を繰り返すことで、将来の妊娠における前置胎盤や癒着胎盤などのリスクが上昇することも知られています。どちらの分娩方法にもメリットとリスクがあるため、一人ひとりの状況に応じて母子の安全を最優先に、医師と十分に相談し、選択することが大切です。
どのような出産方法になっても、そのときにできる最善の方法で
赤ちゃんを迎えることが大切
この記事は鈴木あきえさん個人の体験を紹介するもので、TOLACを推奨するものではありません。TOLACを希望する場合は、担当医からメリットやリスク、緊急時の対応などについて十分な説明を受け、相談したうえで判断してください。
取材・文/やまさきけいこ
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