習い事が続かない、すぐ飽きる…それでも大丈夫?脳医学者が教える“夢中になれる力”の育て方

「うちの子、何にもハマらなくて心配…」「習い事が続かない」「ゲームばかりで大丈夫?」…子どもの“好き”や“夢中”との向き合い方に悩む保護者は少なくありません。今回お話を聞いたのは、脳医学者であり『夢中になれる子の脳』の著者でもある瀧靖之先生。子どもの“好き”はどのように育っていくのか。習い事との向き合い方や、子どものやる気を引き出す声かけについて、脳科学の視点から詳しく教えていただきました。

「好き」がまだ見つからなくても大丈夫?“夢中”はどう育っていくのか

――「うちの子、何にもハマらなくて…」と悩む保護者も多いです。“好きなこと”や“夢中になれること”は、どのように見つかっていくのでしょうか?
瀧先生:“これが好き!”とすぐに見つかる子の方が、実は少ないと思います。私たち大人もそうですが、何かを好きになったり、興味を持ったりする時って、「何度も触れる」という経験がすごく大切なんですね。脳科学では「単純接触効果」と呼ばれるのですが、人は、繰り返し見たり聞いたり、体験したりすることで、興味や関心を持ちやすくなります。
でも、子どもたちはまだ人生経験が少ない。見たことも、体験したことも、まだまだ限られています。そう考えると、「好きなことがまだ見つからない」というのは、むしろ自然なことです。
――子どもの“好き”を見つけるために、親はどんな関わり方をするとよいのでしょうか?
瀧先生:いちばん大切なのは、親自身が楽しんでいる姿を見せることだと思います。例えば、親がスポーツを楽しんでいたり、音楽を聴いたり、何か趣味に夢中になっていたりすると、子どもは自然とそれを見る機会が増えます。すると、「なんだか楽しそうだな」と興味を持ちやすくなります。さらに、子どもは“模倣”から多くを学びます。体の動きだけではなく、「楽しそう」という感情も含めて、まねをしているんです。
だから、「子どもに何かを見つけさせなきゃ」と焦るよりも、まずは大人が人生を楽しむこと。その姿が、子どもの“好き”につながっていくのだと思います。また、親子で同じことを楽しめると、自然と会話も増えますよね。「どうやったらできるの?」「ここが面白かったね」と話す時間が増えることで、コミュニケーションも深まっていきます。実は、こうした日々の会話は、子どもの学びや社会性にもつながっていく大切な土台なんです。
「すぐ飽きる」「続かない」は悪いこと? 子どもの興味との向き合い方
――子どもがすぐ飽きたり、「好きなことがコロコロ変わる」と心配になる保護者も多いと思います。
瀧先生:私は、「いろいろなことに興味を持てる」というのは、とても素晴らしいことだと思っています。たとえ短期間だったとしても、一度経験したことは、将来またやりたくなった時の大きな土台になります。例えば、小さい頃に少しだけ楽器をやっていた子は、大人になって再開する時のハードルがぐっと下がります。
「続かなかった=意味がなかった」ではありません。むしろ、「やってみたい」と思えたこと自体が、とても価値のある経験になります。
――習い事をすぐやめたがる場合、親はどこまで続けさせるべきでしょうか?
瀧先生:やめる時に大切なのは、「失敗体験」にしないことだと思います。例えば、「ここまで頑張ったら一区切りにしよう」と目標を決めたり、「ここまでできるようになったから次のことに挑戦してみよう」と前向きに終われる形を作ったりする。そうすると、子どもの中にも「自分は頑張れた」という感覚が残りやすいんです。「続けられなかったね」ではなく、「ここまで頑張ったね」と声をかけてあげることが大切だと思います。
脳科学的におすすめの習い事は? 未就学期に大切な経験
――習い事を選ぶ時に、親が意識するとよいポイントはありますか?
瀧先生:脳科学の観点からいうと、未就学期は“運動”に関わる脳の発達がとても活発な時期です。その中でも特におすすめなのが、「体全体を使う運動」と、「手先を細かく使う活動」です。前者はいわゆるスポーツや水泳など。後者は、ピアノなどの楽器演奏ですね。
運動には、記憶を司る“海馬”の働きを高める効果があることが分かっています。また、ストレスや不安を軽減する作用も期待できます。一方で、楽器演奏は、譜面を見て、一時的に記憶し、指を動かし、音を聞きながら調整する、脳をかなり広く使う活動なんです。
もちろん、他の習い事がダメということではありません。ただ、「何をやればいいか迷う」という場合には、運動や楽器演奏はとてもおすすめです。
ご褒美やゲームとの付き合い方 “いい夢中”と“悪い夢中”の違いとは
――習い事や勉強で、ご褒美でやる気を引き出すご家庭も多いと思います。ご褒美との付き合い方で気を付けることはありますか?
瀧先生:ご褒美そのものが悪いということではありません。大人だって、「頑張ったらおいしいものを食べよう」と思うとうれしいですよね。
脳科学では、こうした“外から与えられる動機づけ”を「外発的動機づけ」と呼びます。子どもにとっても、やる気のきっかけになる大切な要素です。ただ、外発的動機づけだけに頼ってしまうと、「ご褒美がないとやらない」という状態になりやすい面もあります。
最終的には、「楽しいからやる」「もっと知りたいからやる」という、“内発的な動機づけ”につなげていくことが理想です。そのためにも、習い事や趣味を通して、「できるようになるのが楽しい」「もっとやってみたい」と感じる経験を積み重ねていくことが大切です。
――ゲームなどに夢中になっている時、「これはいい夢中なのか、それともよくない状態なのか」と悩む保護者も多いと思います。
瀧先生:医学的には、「楽しいからやっている状態」と、「楽しくないのにやめられない状態」は違います。前者は“夢中”ですが、後者は依存に近い状態になっていく可能性があります。例えば、睡眠時間が削られている、学校生活に支障が出ている、家族関係に影響が出ているなど、“社会生活に問題が起きている状態”には注意が必要だと思います。
一方で、「ゲームが好き」ということ自体を、すべて否定する必要はありません。大切なのは、「それによって生活全体のバランスが崩れていないか」を、保護者が客観的に見ていくことです。
子どものやる気を伸ばす親の声かけとは

――子どもの“やる気”を伸ばすために、親はどんな声かけを意識するといいのでしょうか?
瀧先生:大切なのは、“結果”だけを見るのではなく、“過程”を見てあげることだと思います。例えば、「100点を取ったからすごい」だけではなく、「頑張って練習していたね」「最後までやり切ったね」と、努力やプロセスを認めてあげる。そうした声かけは、子どもの自己肯定感にもつながっていきます。ポジティブなフィードバックは、子どもの「もっとやってみたい」という気持ちを引き出してくれます。
――逆に、子どもの“やる気”を失わせやすい関わり方には、どんな特徴がありますか?
瀧先生:否定的な声かけが続くと、子どもは意欲を失いやすくなります。もちろん、親も人間なので、つい強い言い方になってしまうこともありますし、「そろそろ切り替えようか」と声をかけなければならない場面もあります。ただ、普段のコミュニケーションや信頼関係が少ない状態で注意ばかりが増えると、子どもは「自分を否定された」と感じやすくなってしまいます。
逆に、親子の間に安心感や愛着形成がしっかりできていると、多少厳しいことを言われても、「自分そのものを否定された」とは受け取りにくい。だからこそ、日頃から会話をしたり、一緒に楽しんだりする時間を持つことが、結果的には子どものやる気にもつながっていくのだと思います。
「好きなことばかりで大丈夫?」 “夢中になれる力”がこれからの時代に必要な理由
――子どもの“夢中になれる力”は、どんな力につながっていくのでしょうか?
瀧先生:私は、“夢中になれる力”は、とても大切な力だと思っています。一見すると、「サッカーばかり」「ゲームばかり」と見えるかもしれません。でも、実際には、一つのことに熱中した経験は、他のことにも応用されます。例えば、「もっとうまくなりたい」「どうすればできるようになるんだろう」と考えながら試行錯誤するプロセスは、スポーツも勉強も、実はすごく似ています。
一つのことに夢中になった経験がある子は、新しいことに出会った時にも、「どうやったらできるかな」と前向きに取り組みやすくなるんですね。だから私は、「好きなことに熱中する」という経験そのものが、子どもの将来につながっていくと思っています。
――最後に、子育て中の保護者へメッセージをお願いします。
瀧先生:子育てって、本当に大変ですよね。理論通りにいかないことのほうが多いと思います。でも、子どもに「何かをやらせなきゃ」と考えすぎなくてもいいのかなと思うんです。むしろ大切なのは、私たち大人自身が、人生を楽しむこと。
親が楽しそうにしている姿は、子どもにとってすごく大きな影響があります。「これ楽しいよ」「一緒にやってみよう」と、大人自身がワクワクしていること。その空気感が、自然と子どもにも伝わっていくのだと思います。
『夢中になれる子の脳』

著者:瀧靖之
出版社:サンクチュアリ出版
「好きなことが見つからない」「ゲームばかりで大丈夫?」「飽きっぽくて集中力がない」子育ての中で、多くの保護者が感じる悩みに、脳科学の視点から向き合った一冊。
著者は、16万人以上の脳画像データを解析してきた脳医学者・瀧靖之先生。最新の研究知見と、ご自身の子育て経験をもとに、“夢中になれる力”がどのように育つのかを、Q&A形式でわかりやすく解説しています。
本書で繰り返し語られているのは、「夢中」には、“いい夢中”と“悪い夢中”があるということ。子どもの好奇心や「やってみたい!」という気持ちを大切にしながら、親はどう関わればよいのか、具体的なヒントが詰まっています。
「子どもを無理に伸ばす」のではなく、その子らしい“好き”を育てていくことの大切さを教えてくれる一冊です。
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企画・編集:&あんふぁん編集部、取材・文:やまさきけいこ





























