時間で管理するのはもうおしまい! 子どもの動画やアプリ使用ルールの「新常識」

時間で管理するのはもうおしまい! 子どもの動画やアプリ使用ルールの「新常識」

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第15回は子どものスクリーンタイムの影響と管理の仕方についてです。

動画視聴やスマホアプリに関する質問は、私が住んでいるカナダでも、教育者や保護者からよく聞かれます。国や場所が違っても、動画やアプリとの付き合い方に悩むご家庭はとても多いと感じています。まず私たちが覚えておきたいのは、動画を見せることが単純に悪いという話ではないことです。今の子どもたちにとって、動画や学習アプリ、オンライン教材は生活の一部です。目指したいのはスクリーンタイムを完全にゼロにすることや「悪」として捉えるのではなく、子どもの発達をサポートしながら、上手に付き合うことだと思います。

小学生以下の子どもたちは、自分で時間を見通したり、楽しいことを途中で切り上げたりする力を鍛えている途中です。動画やアプリを見ることをやめられない=本人の意志が弱い、ということではありません。注意を切り替える力、衝動を抑える力、「そろそろ終わりにしよう」と行動を移行する力は、実行機能(計画を立てて、目標を達成するために自分の行動や思考、気持ちを調整する脳機能のこと)と呼ばれる力の一部で、大人になるまでに少しずつ発達していくものです。大人でも短い動画を延々と見続けてしまうことがあるのですから、子どもにとって自分でやめることはなおさら難しいことです。

スクリーンタイムの質が、子どもの脳の発達を左右する

ある研究によると、スクリーンタイムについては何分間見たかだけでなく、何を見たのかが大切なのだそうです。例えば、アメリカのバージニア大学の研究では、画面が次々に入れ替わるような速い展開のアニメを数分間見ただけでも、子どもの実行機能が下がることが分かっています。一方で、教育的な番組を見た子どもや、お絵描きをしていた子どもには、同じような低下は見られませんでした。つまり、動画がすべて悪いというわけではなく、内容の速さや刺激の強さが、子どもの自己コントロール力に影響しやすいということです。

大切なのは見る内容を意識的に選ぶことです。教育目的で丁寧に作られた番組や、自然や科学、工作などにつながる内容は、子どもの興味を広げる入口になることがあります。一方で、短い動画が次々と流れるもの、大きな音や速い編集で注意を引くようなものは、子どもが自分で切り上げるのが難しくなります。特に幼いうちはその判断を子ども任せにせず、大人が「この中から選ぼう」と境界線を引くことが大切です。

時間で制限するのではなく「自然な区切り」で子どもに納得感を

次に役に立つのは、時間で急に切るよりも「自然な区切り」で終えることです。もちろん時間の目安は必要ですが、動画やゲームの途中で「はい、時間だから終わり」と言われると子どもは気持ちを切り替えにくくなり、かんしゃくにつながることもあります。

アメリカのワシントン大学の研究でも、スクリーンから離れるときには、途中で突然やめさせるよりも、エピソードの終わりやゲームの区切りなど、子どもにとって分かりやすいタイミングで終えるほうが、次のことに移りやすいことが分かっています。「この1本を見たら終わり」「このエピソードが終わったらおしまい」「次のセーブできるところで終わろう」という形がおすすめです。タイマーを使う場合も、強制的に切るためではなく、終わりを予告するために使うとよいでしょう。

そして、動画やアプリが終わった後にすることを、あらかじめ決めておくことも役に立ちます。次にすることが見えているほうが、子どもは画面から離れやすくなります。例えば、動物の動画を見た後に図鑑で探してみる、工作動画を見た後に実際に作ってみるなど、見た内容が実体験へと広がっていきます。また、動画を見た後に、子どもが見ていた内容を少し会話にしてみるのもよいでしょう。「どういうお話だったの?」「何が出てきた?」「あの後、どうなると思う?」と聞いてみるだけでも、親子の会話につながります。

「退屈な時間」こそ、子どものアイデアを引き出すチャンス!

創造性を摘み取らないという意味では、手を使ったり、体を動かしたり、人と会話を楽しんだり、少し退屈したりする時間が動画やアプリに奪われないことが大切です。日常的に動画から刺激を受けていることは、必ずしも創造性にはつながりません。むしろ、少し手持ちぶさたな時間があるからこそ、「何をしようかな」と自分で考え始めるのです。大人は、子どもの「ひま」という言葉を恐れすぎなくてよいと思います。退屈な時間は、子どもが自分の中から遊びやアイデアを生み出すきっかけにもなります。

動画やアプリを終わりにすることで、子どもが怒ったり泣いたりすることも当然あるでしょう。大人でも、楽しいことに区切りをつけるのは難しいものです。そんなときも、「もっと見たかったね。でも今日はこの1本で終わり。また明日見ようね」と気持ちは受け止めながら、終わりははっきり伝えましょう。

とはいえ、スクリーンタイムを完璧に管理しようとしなくても大丈夫です。忙しい日や疲れている日に、動画やアプリに助けられることもあります。大切なのは、大人のサポートで、子どもが少しずつ「ここで終わる」「次に移る」という感覚を身につけていくことです。その積み重ねが、自分で自分を調整する力につながっていきます。

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学び・遊び・教育

児童発達学研究者 島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。日本人で唯一の、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の二つを司る研究者。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て(主婦の友社)』『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス(創元社)』

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