子どもの怒りやかんしゃくにどう向き合う?  「感情を伝える力」を育てる方法

子どもの怒りやかんしゃくにどう向き合う?  「感情を伝える力」を育てる方法

モンテッソーリやレッジョ・エミリアなど、子どもの自主性や創造性を育む『オルタナティブ教育』の第一人者である島村華子さんの連載。第14回は子どものかんしゃくや怒りの感情への対応についてです。

子どもが怒ったりすねたりしていると、「言葉で言えばいいのに」と思うことがあるかもしれません。しかし、幼い子どもにとって、自分の気持ちを理解し、それに合う言葉を見つけて相手に伝えることは、まだ簡単ではありません。特に就学前は、うれしい、悲しいといった気持ちを少しずつ学んでいく時期ですが、それを表す語彙も、自分を落ち着かせる力も、まだ十分には育っていません。大人でも、自分の感情を整理して冷静に伝えるのは難しいものです。そう考えると、子どもが怒りやかんしゃくで気持ちを表すのは、とても自然なことです。子どもに必要なのは、「怒らないようにする」ことではなく、「怒っても安全に伝える方法」を少しずつ身につけていくことなのです。

では、その力はどう育んでいけばよいのでしょうか。まず大切なのは、日々のやり取りの中で、大人が子どもの気持ちに言葉を添えていくことです。「ちゃんと言ってごらん」と言っても、そのスキルが備わっていなければ無理な要求です。たとえば、子どもが怒っているようだったら、「悔しかったのかな」「悲しかったのかな」などと、気持ちを言葉にしてみることで、子どもは少しずつ自分の感情と表現方法を結びつけられるようになります。大切なのは、決めつけたり正解を当てたりすることではなく、子どもが自分の気持ちに気づくための手がかりを渡すことです。

感情を習得するときの手助けになるような言葉がけを

こうしたやり取りを繰り返すことで、感情を表現する語彙も少しずつ増えていきます。最初から難しい言葉を教える必要はありません。「うれしい」「悲しい」「悔しい」「怖い」など、日常でよく出てくる気持ちからで十分です。子どもは言葉だけを覚えるのではなく、「こういうときに、こう感じるんだ」という経験と一緒に覚えていきます。だからこそ、その場その場で大人が短く言葉を添えることに意味があるのです。

また、感情カードなどの道具も、使い方によっては助けになります。ただし、大事なのは、子どもが落ち着いているときに、遊びのような感覚で使うことです。まずは「うれしい」「悲しい」「怒っている」など、基本的な感情から始めてみてください。また、カードは正解当てクイズにしないことも大切です。「この顔は何の気持ち?」で終わるのではなく、「どうしてそう思ったの?」「あなたもこんな気持ちになったことある?」「ママは〇〇だったときにそう感じたよ」と、状況や自分の経験につなげて会話をすることで、理解は深まりやすくなります。

絵本も同じです。ただ読むだけで終わるのではなく、「この子、どんな気持ちかな」「どうしてそう思ったのかな?」と登場人物の気持ちを中心に話してみると、感情の言葉が生きたものになります。感情についての会話そのものが、子どもにとって大切な学びです。

身近な大人の姿が、子どもにとってのいちばんのお手本

また、子どもは大人の姿からも学びます。だからこそ、大人がフラストレーションや疲れを感じたときに、それをどう言葉にして表すかを見せることも大切です。たとえば、「いま少し疲れていて、イライラしているの」「こういうことがあると、悲しい気持ちになっちゃうんだ」と落ち着いて言葉にして伝えることで、子どもは自分の気持ちも言葉にしてよいのだと少しずつ学んでいきます。いろいろな感情を、攻撃的にならずに伝える方法を、大人が日常の中で示していくことがお手本になるのです。

ただし、感情を言葉にすることを無理に求めすぎないことも大切です。気持ちをすべて言葉にできなくても問題ありません。子どもが怒ったりすねたりしている最中は、まず落ち着くことが先です。抱っこする、そばにいる、水を飲む、外の空気に当たる、静かな場所に移る。そうやって子どもの気持ちと体が少し落ち着いてから、「さっきは悔しかったのかな」と振り返れば十分です。その方が、子どもにもメッセージが届きやすくなります。

子どもの気持ちに言葉を添えてあげることが、感情表現の第一歩

大人が覚えておきたいのは、感情をうまく言えないのは、困った子だからでも、しつけが足りないからでもありません。幼い子どもにとって、自分の気持ちを知ってそれを言葉にし、相手に伝えることは、練習が必要な高度なスキルです。だからこそ、毎日の会話も、感情カードも、絵本も、すべてが学びの場になります。大人が子どもの気持ちに丁寧に言葉を添え、「その気持ちはあっていいんだよ。伝え方を一緒に練習しようね」と支えていく。その積み重ねが、子どもが自分の感情を安心して表現し、人と関わっていく力の土台になっていくのです。

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学び・遊び・教育

児童発達学研究者 島村華子

オックスフォード大学修士・博士課程修了(児童発達学)。日本人で唯一の、モンテッソーリ&レッジョ・エミリア教育の二つを司る研究者。現在はカナダの大学にて幼児教育の教員養成に関わりながら、日本でも教育・子育てについて、親や教育者に寄り添ったアドバイスを発信している。著書『アクティブリスニングでかなえる最高の子育て(主婦の友社)』『自分でできる子に育つ ほめ方 叱り方(ディスカヴァー・トゥエンティワン)』『親子でできる モンテッソーリ教育とマインドフルネス(創元社)』

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