「何度言ってもできない」のはなぜ? 多動・衝動・忘れっぽさを脳と体の育ちから考える

今回は、「落ち着きがない」「待てない」「忘れっぽい」といった子どもの様子について、体と脳の育ちの視点から一緒に考えていきたいと思います。

  • 好きなことには夢中になれるのに、やるべきことにはなかなか取りかかれない。
  • 何度言っても忘れ物をしてしまう。
  • 順番を待てずに動いてしまったり、つい言葉や行動が先に出てしまったりする。

そんな姿を見ると、親としては心配になりますよね。

「どうしてこんなに落ち着かないんだろう」「何回言っても伝わらないのはなぜだろう」「やる気の問題なのかな」そんなふうに感じたことがある方も多いのではないでしょうか。

でも実は、多動、衝動、忘れっぽさといった困りごとは、わがままやしつけだけで説明できるものではないことがあります。見えている行動の奥には、その子なりの脳の働き方や、体の土台の育ち方が関係していることもあるのです。

子どもの困りごとを責めるのではなく、「この子の中では何が起きているのかな?」という視点で、やさしくひもといていきます。

「何度言ってもできない」は、やる気の問題ではないことも

子どもが落ち着かない様子だったり、何度言っても忘れてしまったりすると、つい「ちゃんと聞いていないのかな」「少しは気をつけてほしい」と思ってしまうことがあります。

でも、こうした困りごとは、本人のやる気不足や、親の関わり方だけが原因とは限りません。

  • たとえば、まわりの音や動きが気になりやすい子
  • 次に何をすればいいか頭の中でまとまりにくい子
  • 体をじっと止めておくこと自体がつらい子

そうした子どもたちは、見た目以上にたくさんのことを同時に処理しようとして、頭の中が忙しい状態になっていることがあります。

親から見ると「なぜできないの?」に見えることでも、子どもの中では「やりたいけれど、うまくいかない」が起きているのかもしれません。まずはここを知るだけでも、子どもの見え方が少し変わるかもしれません。

子どもの頭の中では、「動き出す」「止まる」といったことが難しいことがある

この話をすると、多くの親御さんが驚かれます。

私たちは普段、

  • 動く
  • 止まる
  • 待つ
  • 切り替える

といった様々な行動を、当たり前のようにやっています。

でも、子どもによっては、こうした行動を調整する力が、まだ十分に育ちきっていないことがあります。

例えるなら、車のアクセルやブレーキをうまく調整するようなイメージです。動き出すときにはアクセルを踏み、止まるときにはブレーキをかけるように、私たちも状況に合わせて行動を調整しています。子どもによっては、この調整がまだうまくいきにくいことがあります。

子どもの場合も同じように、

  • 「やろうと思っても始めにくい」
  • 「止まりたいのに止まりにくい」
  • 「次に移りたいのに切り替えにくい」

ということが起きることがあります。これは、わざと困らせているわけではなく、子どもの中で「動きや気持ちを調整する力」がまだ育ち途中という見方もできるのです。

実は、子ども本人も困っているのかもしれません

  • 忘れ物が多い。
  • すぐに気がそれる。
  • 立ち歩いてしまう。
  • 会話の途中で思わず口をはさんでしまう。

こうした姿が続くと、まわりの大人はつい注意することが増えてしまいます。でも、そのたびに子どもは「また怒られた」「またできなかった」という気持ちを積み重ねているかもしれません。

本人だって、本当はうまくやりたい。本当は怒られたくない。本当はちゃんとできるようになりたい。そう思っていることも少なくありません。

それでもうまくいかないのは、さぼっているからではなく、頭の中の情報処理が追いつかなかったり、体の使い方が整いきっていなかったりするからかもしれません。

そう考えると、子どもに必要なのは「もっと頑張りなさい」という言葉より、「どうしたらやりやすくなるかな?」という視点なのだと気づかされます。

こんな様子、思い当たることはありませんか?

落ち着きのなさ、忘れっぽさが気になる子には、日常の中でこんな姿が見られることがあります。

  • 好きなことにはものすごく集中するのに、やるべきことにはなかなか取りかかれない。
  • 順番を待つのが苦手。
  • 会話の途中でつい話し始めてしまう。
  • 思わず手や足が先に出てしまう。
  • 長く座っていることがつらい。

もちろん、こうした様子がひとつあるだけで、すぐに何かが決まるわけではありません。ただ、困りごとが重なって続いているときには、「性格だから」「わがままだから」で終わらせない視点が大切です。

落ち着かなさや忘れっぽさは、体の土台ともつながっている

落ち着かなさや忘れっぽさというと頭の中だけの問題のように感じるかもしれません。でも実は、体の使いやすさとも深くつながっているようです。たとえば、子どもが毎日落ち着いて過ごすためには、

  • 姿勢を保つこと
  • 自分の体が今どこにあるか感じること
  • 力の入れ具合を調整すること
  • まわりの音や動きを受け取りながら必要なことに注意を向けること

といった、土台の力が必要です。

発達のピラミッド

(発達のピラミッドについて:https://enfant.media/health/128208/)

こうした土台がまだ不安定だと、子どもの頭の中はそれだけで忙しくなります。すると、先生の話を聞く、順番を待つ、忘れずに持ち物を準備する、といったことまで手が回りにくくなることがあります。

たとえるなら、スマホでたくさんのアプリが一度に開いていて、動きが重くなっているような状態です。外からは「集中していない」「落ち着きがない」と見えても、中ではたくさんのことを同時に処理しようとして精いっぱいなのかもしれません。だからこそ、見えている行動だけを変えようとするのではなく、まずはその子の土台に目を向けていくことが大切になってきます。

「動く・止まる・待つ」を遊びながら経験!おすすめの運動遊び 3選

では、家庭ではどんなことができるのでしょうか。

特別な教材や、厳しいトレーニングが必要というより、まずは遊びの中で体をしっかり使うことが大切です。遊びながら、止まる、動く、待つ、切り替えるといった経験を重ねていくことが、子どものやりやすさにつながっていきます。

1つ目は、「風船バレー」

この運動では相手の動きや、風船の動きに合わせて体を動かすことで、協調性や力加減を調整する力が身につきます。風船は子どもが好きな遊び道具の一つなので、すごくおすすめです。

「風船バレー」の紹介はこちら

2つ目は「スティックを避けろ!」

この運動も相手の動きに合わせて、動いたり、止まったりする練習になります。この運動は、バランスの練習にも繋がっている為、子どもたちの落ち着きを獲得する上でもおすすめです。

「スティックを避けろ!」の紹介はこちら

3つ目は「クマでバランス」

この運動では、協調性だけではなく、相手の動きに合わせて、見通しを立てて、バランスをとりながら手足を動かしていく必要があります。
その為、子どもたちが順序立てて物事を勧めていく上で必要な力を鍛えられていきます。
また、押す、引っぱる、運ぶといった、しっかり力を使う遊びも、体を感じる助けになります。
体をしっかり使うことで、落ち着きやすくなる子もいます。

「クマでバランス」の紹介はこちら

ここで大切なのは、上手にやらせることではありません。楽しく、くり返し、体を使えること。

その積み重ねが、子どもの土台を少しずつ育てていきます

親御さんにいちばん伝えたいこと

多動、衝動、忘れっぽさがある子を育てていると、親御さんは悩まれることが多くあるかもしれません。どう関わればいいのかわからなくなる日もあると思います。周りと比べて不安になることもあるかもしれません。でも、まず知っておきたいのは、その子の困りごとには、ちゃんと理由があるかもしれないということです。

  • 落ち着きがない。
  • 待てない。
  • 忘れっぽい。

そんな姿の奥には、本人の努力不足ではなく、脳や体の育ち方が関係していることがあります。そして、見方が変わると、関わり方も変わります。

「なんでできないの?」ではなく、「どうしたらやりやすくなるかな?」と考えられるようになるだけで、親子の毎日は少しずつ変わっていきます。子どもを責める前に、親が自分を責める前に、まずは「この子なりの理由があるかもしれない」と知っておくこと。それが、やさしい関わり方の始まりになるはずです。

ライター

「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士まさやコーチの画像

「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士 まさやコーチ

これまで1000人以上の子どもを対象に、延べ3000回以上の運動・発達支援を実施。特に、発達が気になる子どもや運動が苦手な子どもへのサポートに力を入れ、「できた!」という成功体験を積み重ねる指導を大切にしている。
東京パラリンピックではドイツ・ベラルーシ代表選手のトレーナーを務めるなど国際的な経験も持つ一方、現在はオンライン運動・発達支援サービス「へやすぽアシスト」の代表コーチとして、レッスンを通じて、全国の親子に「遊びながら育つ運動の楽しさ」を届けている。 株式会社フレーベル館の月刊保育絵本『キンダーブック2』(3・4歳児向け)で運動あそびコーナーを監修。さらに2025年4月号からは、明治図書出版『特別支援教育の実践情報』にて、「学びの土台を育む運動あそび」の1年間の連載を担当。2026年9月17日には初の書籍を出版しました!
書籍:遊んでたらできちゃった! 発達の土台を育てる感覚統合運動遊びhttps://www.amazon.co.jp/dp/4491065500

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