「気持ちを切り替えられない」のはわがまま?知っておきたい子どもの体と脳の育ち

こんにちは!
オンライン運動教室「へやすぽアシスト」で、これまで1000人以上のお子さんの運動や発達をサポートしてきた理学療法士のまさやコーチです。過去には東京2020パラリンピックで車椅子フェンシング ベラルーシ代表選手のサポートも行ってきました。
今回は、「なかなか気持ちを切り替えられない」という子どもの様子について、体と脳の育ちの視点から一緒に考えていきたいと思います。
好きなことをやめられないのは、わがままなだけじゃない?
- 「もうおしまいだよ」と声をかけても、なかなかやめられない。
- 次のことに移ろうとすると、固まってしまう。
- 予定が変わると泣いてしまう。
そんな子どもの様子を見て、「この子は切り替えが苦手なのかな」「わがままなのかな」と悩んだことはありませんか。親としては、毎日のことだからこそ心配になりますよね。何度言っても動けないと、つい「早くして」「なんで切り替えられないの?」と言いたくなることもあると思います。
でも実は、子どもの「切り替えの苦手さ」は、性格やしつけだけで説明できるものではないんです。見えている行動の奥には、体や脳の育ち方が関係していることがあります。
子どもがなかなか行動をやめられないと、「言えばわかるはずなのに」「好きなことばかり優先している」と見えてしまうことがあります。
でも、実際にはそうではなく、頭の中で「次へ行こう」と切り替える力そのものが、まだ育ち途中のことがあります。つまり、やめたくないという気持ちだけではなく、やめるための準備そのものに時間がかかっていることがあるのです。
これは、親のしつけが悪いからでも、子どもの努力が足りないからでもありません。まずはそこを知るだけでも、親子の見え方はかなり変わります。
切り替えには、「脳のスイッチ」が必要
切り替えが苦手な子の話をするとき、よく「気持ちの問題」と思われがちです。でも実は、脳には注意を切り替えるためのスイッチのような働きがあります。
このスイッチがうまく働くと、
- 今やっていることを終える
- 次にやることへ目を向ける
- 気持ちを切り替える
- 予定の変化に対応する
といったことがしやすくなります。
逆に、この働きがまだ弱いと、「わかっているのに動けない」「次に行きたいのに切り替わらない」ということが起こりやすくなります。
親から見ると反抗しているように見えても、子どもの中では、切り替えるためのスイッチがうまく入らないだけなのかもしれません。
好きなことだけやめられないのは、なぜ?

ここも、多くの親御さんが「そういうこともあるのか」と感じやすいところです。
たとえば、
- ゲーム
- 動画
- 読み聞かせ
- 好きなおもちゃ遊び
こうした「楽しいこと」は、やめるのが特に難しくなりやすいですよね。それは、子どもがただ甘えているからとは限りません。
楽しいことに夢中になっているときは、頭の中が「楽しい」「もっとやりたい」でいっぱいになりやすく、そこから次に移るには、いつも以上に大きな切り替えのエネルギーが必要になるからです。
大人でも、夢中になっているときに急に話しかけられると、すぐには反応しにくいことがありますよね。
子どもの場合はそれが、より大きく起きることもあるイメージです。
切り替えが苦手な子に見られやすい様子
日常の中では、こんな様子が見られることがあります。
- 今やっていることを、好き嫌いに関係なくやめにくい
- 「次〇〇するよ」と言われると固まる
- 話しかけても聞こえていないように見える
- 楽しいことを終わらせようとすると感情が大きく崩れる
- やめたあとも気持ちを引きずってしまう
- 予定が変わると、急な変化で混乱しやすい
- 「もうすぐ終わるよ」と言われただけで不安定になる
- 毎日同じ順番ややり方にこだわりやすい
こうした姿は、「言うことを聞かない」と受け取られやすいのですが、見方を変えると、気持ちだけの問題ではなく、切り替えを助ける土台がまだ育っている途中とも言えます。
切り替えの苦手さは、体の土台ともつながっている
ここが、今回の内容でいちばんお伝えしたいところです。切り替えというと、頭の中だけの話に思えますよね。
でも実は、切り替えは体の使いやすさとも深くつながっていることもあるんです。
たとえば、
- 姿勢を保つ
- バランスを取る
- 周囲の音を聞き分ける
など、こうしたことがスムーズにできていないと、子どもの頭の中はそれだけで忙しくなります。つまり、見えないところでたくさんの力を使っているため、次のことに注意を向ける余裕が少なくなってしまうのです。
例えるなら、スマホでいくつものアプリを同時に開いて、動きが遅くなっているような状態です。外からは「動いていない」ように見えても、中では一生懸命働いていて、次の指示まで手が回らない状態です。

(発達のピラミッドについて:https://enfant.media/health/128208/)
だからこそ、必要なのは「叱ること」より「切り替える練習」
切り替えが苦手な子に対して、「早くしなさい」「何回言ったらわかるの」と強く言いたくなることはあります。でも、もし切り替えの土台がまだ育っている途中なら、必要なのは気合いや根性ではなく、体を使いながら「切り替える経験」を増やしていくことです。
大切なのは、頭だけで理解させることではなく、体の動きの中で、止まる・始める・次へ移るを何度も経験することです。そうした積み重ねが、切り替えのしやすさにつながっていきます。
切り替えの土台作りにおすすめの運動遊び 3選
1つ目は、「潜って風船キャッチ」

この運動遊びでは、「投げる」「しゃがむ」「移動する」「キャッチ」など様々な要素を切り替えながら実施する必要があります。また、風船を投げる時には「キャッチするためには?」と考え、見通しを立てて力加減を調整する必要があるため、切り替えにも必要な見通し力を鍛えることにも役立ちます。
2つ目は、「蜘蛛でスティック避け」

この遊びでは、姿勢を崩さないようにしながら、スティックの動きに合わせて避けるという動きを行います。その中で、姿勢を維持しつつも、周りの動きに合わせて体をコントロールするという力が鍛えられます。
3つ目は、「素早くフープキャッチ」

この遊びでは、ただキャッチするだけではなく、指示に合わせて体を動かします。
「はい」という声掛けに合わせて、動く練習になるため、指示に意識を向け、その後、キャッチを行うという意識の切り替えの練習を遊びの中で鍛えることができます。
親御さんにいちばん伝えたいこと
切り替えが苦手な子を見ると、親御さんは悩む事があると思います。
毎日の支度、食事、お風呂、寝る前、園や学校の準備。小さな「次へ行こう」が積み重なるたびに、心配も増えていきますよね。でも、そこでまず知っておきたいのは、「切り替えられない」のには理由があるかもしれない、ということです。わがままだから、親のせいだからと決めつけるのではなく、その子の体や脳が、今ちょうど育っている途中なのかもしれません。
そう思えるようになると、「なんでできないの?」ではなく、「どうしたらやりやすくなるかな?」という関わり方に変わっていきます。切り替えは、急に上手になるものではありません。でも、遊びの中で少しずつ「止まる」「動く」「次へ行く」を経験していくことで、育っていく力でもあります。
「この子はダメなんだ」ではなく、「今、育っている途中なんだ」そんな目で見られるようになるだけで、毎日の生活が明るくなっていくと思います。
ライター
「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士 まさやコーチ
これまで1000人以上の子どもを対象に、延べ3000回以上の運動・発達支援を実施。特に、発達が気になる子どもや運動が苦手な子どもへのサポートに力を入れ、「できた!」という成功体験を積み重ねる指導を大切にしている。
東京パラリンピックではドイツ・ベラルーシ代表選手のトレーナーを務めるなど国際的な経験も持つ一方、現在はオンライン運動・発達支援サービス「へやすぽアシスト」の代表コーチとして、レッスンを通じて、全国の親子に「遊びながら育つ運動の楽しさ」を届けている。 株式会社フレーベル館の月刊保育絵本『キンダーブック2』(3・4歳児向け)で運動あそびコーナーを監修。さらに2025年4月号からは、明治図書出版『特別支援教育の実践情報』にて、「学びの土台を育む運動あそび」の1年間の連載を担当。



























