子どもの姿勢の崩れが気になるママへ。実は 腹筋だけでは育たない「体の土台」の秘密

こんにちは!
オンライン運動教室「へやすぽアシスト」で、これまで1000人以上のお子さんの運動や発達をサポートしてきた理学療法士のまさやコーチです。過去には東京2020パラリンピックで車椅子フェンシング ベラルーシ代表選手のサポートも行ってきました。
今回は、「すぐに姿勢が崩れる」「まっすぐ座り続けられない」といったお悩みを入り口に、子どもの体幹と、姿勢を支える「体の土台」についてお話しします。
姿勢が崩れやすいのは、体幹が弱いから?
「うちの子、すぐ姿勢が崩れてしまうんです」「座っていても、すぐにもたれたり、ずり落ちたりするんです」そんなお悩みを聞くことがあります。
すると多くの親御さんが、「体幹が弱いのかな」「腹筋や背筋を鍛えたほうがいいのかな」と仰られています。
たしかに「体幹」と聞くと、筋肉の話を思い浮かべやすいですよね。でも実は、子どもの姿勢を維持できるようになるための体幹を手に入れる為には、腹筋や背筋を鍛えれば良いというわけではないんです。今回お伝えしたいのは、子どもの体幹は「筋肉の強さ」だけではなく、「体をうまく使うための土台」が育っているかどうかが大きく関係しているということです。
「体幹が使える」=「腹筋・背筋が強い」ではない?
親御さんが最初に驚かれるのが、ここかもしれません。体幹というと、どうしても「お腹を鍛える」「背中を鍛える」というイメージがあると思います。でも実は、子どもが姿勢を保つために必要なのは、腹筋や背筋の強さだけではないんです。
たとえば、まっすぐ座るためには、
- 自分の体が今どんな向きかを感じる
- 椅子にどう座っているか気づく
- 少し傾いたときに自然に戻す
- 頭を動かしてバランスを保つ
といったことが、無意識のうちにできている必要があります。大人は普段あまり意識していませんが、ただ座っているだけでも、体の中ではいろいろな調整が行われているんです。つまり「体幹が使えている」というのは、ただ筋肉が強いことではありません。
自分の体の位置を感じたり、バランスを取ったり、自然に姿勢を保ったりする力も含めた「体の使いやすさ」のことなんです。
まっすぐ座れないのは、やる気だけの問題ではない!

子どもが何度言っても姿勢を直せないと、ついつい「ちゃんと座って」「また崩れてるよ」と声をかけたくなりますよね。でも、姿勢が崩れやすい子の中には、そもそも「座り続けること」自体に、たくさんのエネルギーを使っている子もいます。親御さんから見ると、ただ座っているだけに見えるかもしれません。
でも、子どもの体の中では、
- 体を支える
- バランスを取る
- 頭の位置を保つ
- 目の動きに合わせて姿勢を調整する
といったことが、ずっと行われています。たとえば、学校で黒板を見て、手元のノートに視線を戻す。これだけでも、頭や目を動かしながら、姿勢を保つ必要があるんです。
こうした「体の土台」がまだ育っている途中だと、座っているだけで疲れてしまい、そのぶん勉強や箸や鉛筆など手先の作業に力を回しにくくなることがあります。「集中していない」のではなく、集中する前の段階で、体がもう頑張っていて、集中したくてもできない状態であることが多いです。
こんな様子、見たことありませんか?
体幹の土台が育ち途中の子には、日常の中でこんなサインが見られることがあります。
- 椅子に座ると、すぐにもたれる、ずり落ちたりする
- 一度姿勢を直しても、少しするとまた崩れる
- 黒板とノートを見比べると、体がぐらつく
- 机や椅子の角によくぶつかる
- 話しかけられたり、考えごとをしたりすると、姿勢が一気に崩れる
- 集中していると、顔がどんどん机に近づいたり、前かがみになったりする
こうした様子があると、「不注意かな」「落ち着きがないのかな」と見えてしまうこともあります。でも、少し見方を変えると、体をうまく使うための土台がまだ育っている途中だというサインかもしれません。「うちの子にも当てはまるかも」と感じた方は、この先もぜひ読んでみてください。
子どもの姿勢や運動を支える「体の土台」については、以前の記事でも「発達のピラミッド」を使って詳しく紹介しています。今回の記事とあわせて読んでいただくと、よりイメージしやすいと思います。
(発達のピラミッドについて:https://enfant.media/health/128208/)

子どもの体の中では、何が起きている?
ここで大事なのが、子どもが自分の体をどれくらいうまく感じ取れているか、ということです。たとえば大人は、目を閉じていても、「腕がどこにあるか」「どれくらい力を入れているか」を、なんとなく感じることができますよね。また、少し体が傾いたときにも、無意識に元の位置に戻すことができます。この「なんとなくできていること」が、実は姿勢を保つための土台になっているんです。
こうした力は、これまでに歩いたり、走ったり、転んだり、いろいろな遊びを経験したりする中で、少しずつ育っていきます。 脳の中に「自分の体がどこにあって、どう動くのか」という「体の地図」がつくられ、結果として体のコントロールが上手になっているからできるんです。
この地図がまだ育ち途中だと、自分の体の位置がつかみにくく、まっすぐ座ることや、姿勢を保ちながら手を使うことが難しくなります。「地図がはっきりしていないまま動こうとすると、うまくたどり着けない。」そんなイメージを持つと、わかりやすいかもしれません。
体幹づくりに必要なのは、「筋トレ」より「土台づくり」
「体幹が弱い」と聞くと、腹筋や背筋を鍛えればよさそうに感じますよね。でも、体の土台が育っている途中の子に、きなりきつい筋トレをさせればいいわけではありません。
まず大切なのは、
- 体を感じること
- 揺れに慣れること
- 姿勢が崩れそうになったときに、自然にバランスを取ること
こうした経験を、遊びの中で少しずつ重ねていくことなんです。つまり、子どもの体幹づくりは、「鍛える」より「育てる」に近いです。おうちでできることは、意外と普段の「遊び」の中にあります。特別な道具や、難しいトレーニングが必要なわけではありません。大切なのは、子どもが楽しみながら、体を感じたり、揺れに対応したりできる遊びを取り入れることです。
体幹を使うための土台作りにおすすめの運動遊び 3選
1つ目は、「熊でボール拾い」

この運動では、四つ這いの状態で移動することで、自然と体幹を使う感覚を鍛えられます。また、ボールを見ながら移動させるという動きも行わないといけない為、体幹への意識は向けず、姿勢を保ちながら腕の動きを作ることができます。
2つ目は、「ぐらぐらおもちゃ集め」

この運動では立った状態でバランスクッションに乗ることで、不安定な状態で姿勢を維持しながら、腕の力加減を調整しながら体を動かす練習をすることができます。結果、姿勢を自然と維持する練習に繋がります。
3つ目は、「ホッケーゲーム」

この運動では、姿勢を維持するのに必要な背中の感覚を鍛えつつ、腕をコントロールする練習をすることができます。結果として、箸や鉛筆の操作の上達に繋がります。
このような遊びは、姿勢を保つための土台づくりにつながります。ここで大切なのは、「正しくやらせること」より、楽しみながら何度も体を使う感覚を経験することです。
遊びの中で少しずつ、「体を支える」「バランスを取る」「手足を思い通りに使う」という経験が積み重なっていきます。
親御さんにいちばん伝えたいこと
姿勢が崩れやすい子、じっと座っていられない子を見ると、心配になりますよね。何度声をかけても姿勢が戻らないと、「やる気がないのかな」 「ちゃんとしようとしていないのかな」と思ってしまうこともあります。その子なりに頑張っているけれど、まだ体をうまく使うための土台が育っている途中なのかもしれません。
そう考えると、「なんでできないの?」ではなく、「どうしたらやりやすくなるかな?」と、少し見方を変えられるようになります。体幹は、腹筋や背筋を鍛えるだけで育つものではありません。子どもの毎日の姿勢や動きの中には、たくさんのヒントがあります。
もし気になる様子があるなら、「ちゃんと座らせなきゃ」と考えるだけでなく、まずは、遊びの中で体の土台を育てていくことから始めてみてもよいかもしれません。「まっすぐ座れない」には、その子なりの理由があります。そう知るだけで、子どもへの声のかけ方や関わり方は、きっと変わってくると思います。
ライター
「へやすぽアシスト」代表コーチ/理学療法士 まさやコーチ
これまで1000人以上の子どもを対象に、延べ3000回以上の運動・発達支援を実施。特に、発達が気になる子どもや運動が苦手な子どもへのサポートに力を入れ、「できた!」という成功体験を積み重ねる指導を大切にしている。
東京パラリンピックではドイツ・ベラルーシ代表選手のトレーナーを務めるなど国際的な経験も持つ一方、現在はオンライン運動・発達支援サービス「へやすぽアシスト」の代表コーチとして、レッスンを通じて、全国の親子に「遊びながら育つ運動の楽しさ」を届けている。 株式会社フレーベル館の月刊保育絵本『キンダーブック2』(3・4歳児向け)で運動あそびコーナーを監修。さらに2025年4月号からは、明治図書出版『特別支援教育の実践情報』にて、「学びの土台を育む運動あそび」の1年間の連載を担当。



























