触れる・触れられる体験が心を育てる 「触覚」の役割って?

子どもを見ていると、「どうしてこんなに同じ遊びを繰り返すんだろう」「こんな遊び、意味あるのかな?」そんな風に感じること、ありませんか。けれど実は、遊びの中で子どもは、将来の学びや人間関係を支える、とても大切な力を育てています。今回も、子どもの行動から見える「生きる力の土台」について考えてみたいと思います。
「安心できる体験」が心を育てる
前回は、子どもの行動の背景には、感覚や身体の状態といった見えにくい土台があることをお伝えしました。今回は、その土台の一つであり、人とのつながりや安心感に深く関わる「触覚」についてご紹介します。
発達のピラミッドという考え方
子どもの発達を考えるときによく用いられるのが「発達のピラミッド」です。ピラミッドの上には学習やコミュニケーション、情緒の発達があります。一方、その土台には次のような感覚があります。
- 触覚(触れる・触れられる感覚)
- 前庭感覚(バランス感覚)
- 固有受容覚(身体の位置や動きを感じる感覚)
家づくりに土台が必要なように、子どもの発達にも土台があります。その土台となるのが感覚です。そして、その中でも触覚は、赤ちゃんのころから人とのつながりや安心感を育む大切な感覚です。

触覚には2つの役割がある
触覚には大きく2つの役割があります。一つは自分の身を守ることです。熱いものに触れたときに手を引っ込めたり、虫が体についたことに気づいたりする働きです。もう一つは安心感を得ることです。抱っこや手をつなぐこと、毛布に包まれることなどの心地よい触覚は、心と身体を落ち着かせる働きをもっています。
触られるのが苦手な子どももいる
しかし、全ての子どもが触れられることを心地よく感じるわけではありません。例えば、触覚が過敏な子どもには次のような姿が見られることがあります。
- 抱っこを嫌がる
- 髪を切るのを嫌がる
- 服のタグを気にする
- 人ごみを嫌がる
これは「わがまま」ではなく、触覚の感じ方の違いによるものかもしれません。
反対に、次のような触覚の刺激を求める子どももいます。
- いつも誰かに触りたがる
- 強く抱きつく
- 物にぶつかりたがる
大切なのは、「なぜその行動をしているのだろう?」と考えてみることです。その背景には、感覚の感じ方の違いが関係していることがあります。
抱っこやスキンシップにも個性がある
愛着形成というと抱っこが大切だと言われますが、安心の感じ方には個人差があります。抱っこが好きな子もいれば、一緒に遊んだり、隣に座ったりすることで安心する子もいます。大切なのは、「こうしなければならない」ではなく、その子に合った安心の形を見つけることです。
触れない支援もある
触覚に敏感な子どもにとっては、無理に触れられることが負担になる場合があります。そんなときは、子どものペースを尊重しながら関わることが大切です。安心感は、触れることだけでなく、「ここは安全な場所だ」と感じられることからも育まれます。
今日からできる安心の工夫
まずは、その子が安心しているときの様子を観察してみましょう。
- 誰といるときに笑顔が多いか
- どんな遊びをしているときに落ち着いているか
- どんな環境で安心して過ごしているか
安心できる体験が増えるほど、子どもは周囲の世界に興味を持ち、新しいことに挑戦しやすくなります。
また、自然の中には触覚を豊かにする体験がたくさんあります。砂遊びや泥遊び、水遊び、落ち葉集めなどを通して、子どもたちはさまざまな感触に出会います。
そうした「楽しい」「気持ちいい」という体験も、安心感を育む大切な時間になります。
おわりに
発達のピラミッドの土台には、さまざまな感覚があります。触覚は、人とのつながりや安心感の形成に重要な役割を果たす感覚の一つです。安心できる体験は、子どもの心と身体の成長を支える大切な栄養になります。次回は、もう一つの重要な土台である「前庭感覚(バランス感覚)」についてご紹介します。「すぐ転ぶ」「体がぐにゃぐにゃする」「落ち着きがない」などといった姿との関係を一緒に考えていきたいと思います。
【参考になる情報】
「感覚統合の発達と支援 子どもの隠れたつまずきを理解する」A・ジーン・エアーズ 著/岩永竜一郎 監修・訳、古賀祥子 訳(金子書房)
「Be-Youプログラム絵カード」日本デフビーチバレーボール協会(株式会社ジャクエツ)
こころとからだの発達ラボHP(https://cocokara-labo.jp/)
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