子どもが落ち着かないのは「心と体を整えている」サイン? 体のバランス感覚を育む「前庭覚」とは

子どもを見ていると、「どうしてこんなに同じ遊びを繰り返すんだろう」「こんな遊び、意味あるのかな?」そんな風に感じること、ありませんか。けれど実は、遊びの中で子どもは、将来の学びや人間関係を支える、とても大切な力を育てています。今回は、子どもの行動から見える「生きる力の土台」の一つである「前庭覚」について解説します。
動くことで心も整う? 前庭覚の役割とは
前回は、「発達のピラミッド」と「触覚」をテーマに、安心感を育てる感覚についてお話ししました。今回は、発達の土台となるもう一つの大切な感覚である「前庭覚(ぜんていかく)」をご紹介します。
前庭覚とは、体の傾きや動き、スピードの変化を感じる感覚です。耳の奥にある三半規管などが働き、私たちの体のバランスや姿勢を支えています。子どもたちは、次のような遊びを通して、自然に前庭覚を育てています。
- ブランコ
- すべり台
- でんぐり返し
- 鬼ごっこ
前庭覚が働くことで、転ばずに歩いたり、姿勢を保ったり、視線を安定させたりすることができます。また、活動的になったり落ち着いたりといった心身の状態にも関わっていると考えられています。そのため、「動くこと」は体を育てるだけでなく、心を整えることにもつながるのです。

子どもが動きたがるのには理由がある
子どもの中には、次のような姿が見られる子がいます。
- じっとしていられない
- 走り回ることが多い
- 椅子を揺らしてしまう
- 高いところに登りたがる
もちろん理由は一つではありませんが、その背景には「もっと動きたい」「体を動かして気持ちを整えたい」という欲求が関係していることもあります。
また、次のような遊びは前庭覚をたくさん使う活動です。
- ぐるぐる回る
- ブランコをこぐ
- でんぐり返しをする
- ジャンプをする
こうした遊びを通して、子どもはバランス感覚や姿勢の安定、体の使い方を学んでいきます。大人から見ると落ち着きがないように見える行動も、体や気持ちを整えようとしているサインかもしれません。そのため、「動かないようにする」だけでなく、十分に体を動かせる機会をつくることも大切です。
おうちでできる「動き遊び」
前庭覚は、毎日の遊びの中で育てることができます。例えば、次のような遊びがおすすめです。
- 坂道を上り下りする
- 鬼ごっこをする
- 平均台や縁石の上を歩く
大切なのは、上手にやることではなく、楽しみながら体を動かすことです。遊びの中でのさまざまな動きの経験が、心と体の土台づくりにつながっていきます。
おうちでこんな遊び、やってみませんか?


大人が危険に感じる動きでも、子どもにとっては体の使い方を学ぶ大切な経験になることがあります。周囲の環境などの安全に十分に配慮しながら、さまざまな動きに挑戦できる機会をつくっていきたいですね。
おわりに
子どもは遊びながら育ちます。回ること、揺れること、走ることは、ただ楽しいだけではありません。その中で前庭覚が十分に使われ、自分の体をコントロールする力や心を整える力も少しずつ育まれていきます。
「落ち着かせるために止める」のではなく、「十分に体を動かして気持ちを整える」という視点を持つことで、子どもの姿が違って見えるかもしれません。
次回は、もう一つの大切な感覚である「固有受容覚(体の位置や力加減を感じる感覚)」についてご紹介します。「力が強すぎる」「弱すぎる」「不器用に見える」といった姿との関係を一緒に考えていきたいと思います。
【参考になる情報】
「感覚統合の発達と支援 子どもの隠れたつまずきを理解する」A・ジーン・エアーズ 著/岩永竜一郎 監修・訳、古賀祥子 訳(金子書房)
「Be-Youプログラム絵カード」一般社団法人日本デフビーチバレーボール協会(株式会社ジャクエツ)
こころとからだの発達ラボHP(https://cocokara-labo.jp/)
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